不統一なコード体系が事業統合を阻害する |
生協の情報システムが抱える今日的課題 第3回 |
今でこそあたりまえのことだが、二十数年前に生協としてははじめてPOSシステムを導入した当時は、ソースマーキング率といって、どれだけの商品にバーコードが印刷されているかが重大な関心事だった。POSシステムの基本は商品にバーコードが印刷されていることを大前提として単品管理を実現しようとしていたからだ。すべての商品にバーコードという統一されたコードが印刷されるようになって小売業の情報革命が始まったといっても過言ではないだろう。
どこかの大企業だけが取り組んだことではなく、メーカーから小売りまでが一体となって同じ規格、同じ基準でのコード作りをしたことで、今日、規模の大小を問わず、全国あらゆる小売り現場での商品の売れ行きや動向、発注から仕入、販売にいたるまで、あらゆる商品が単品として把握できる時代となっている。さらには、全国規模でのマーケティング情報などの分析も可能にしている。
実際に、流通情報の研究機関を中心とし、メーカー、卸、小売が参加した大規模なプロジェクトにおいて、D社、J社などに互して関西のある生協のPOSデータが全国の商品動向のサンプルデータとして比較検証された時期もあった。
では、POSを切り口とする店舗事業のデータよりも生協としての事業規模の大きい共同購入における商品動向はどのように把握されているのだろう。わたしも、先に述べたプロジェクトに参画していたが、モニター調査の中にPOSデータから分析しきれない影のような家計支出があり、おおよそそれが生協の共同購入によるものという分析がされてはいたが、その内容は杳としてはかりきれなかったという経験がある。
その原因は共同購入における商品の管理コードが生協ごとに千差万別で、POSで使われるJANコードのように、世界中で一意にその商品にひもづけられているものではないことがあったからだ。そのことは、今日においても変わってはいない。
情報システムの設計や構築において、何よりも重要視されるのは、データの構造を決めるコード体系だ。商品を例にとれば、管理する最小単位である単品のコード、そしてそれをカテゴリーとしてとらえる商品分類、業務組織の構造までを含めた部門の体系を考案し、その中で供給高や利益を管理する単位をどこに置くか、それをどうやってコントロールするかということを明確に決めることで作るべき情報システムも明かとなり、業務運営のルール、コントロールの手法、果ては人員管理から評価制度といった人事政策までが定まってくるきわめて重要な要素といって間違いない。
残念なことに、コードを設計するということにそれだけの重要性があることを充分に理解しながら情報システムなり業務システムを構築している生協はそれほど多くはない。しかも、コードの体系は、その適否はともかくとしても、生協の数だけ存在するといってもいいほど不統一に存在している。このことが、事業連合や事業統合において、どれほど大きな阻害要因になっているかは計り知れない。日本生協連を中心に、会計基準や会計管理の基本コード体系である勘定科目コードなどは、一応、生協標準的なものが以前から存在してはいるが、それでもまだ、生協ごとに管理レベルの差もあって完全に統一されている状況ではない。
他の業種においては、業界団体が主導となって、規格やコード体系の統一が当然のごとく行われている。規格の統一が時に大きなビジネスチャンスをもたらすものにもなり、また、次世代DVDなどのデジタルメディアに見られるように、消費者にとっても統一されるかされないかが大きな影響をもたらすものにすらなってきている。生協は、いつまでこのような規格やコード体系の不統一を放置し続けるのだろうか。(この項つづく)
(コープソリューション 2006年4月号掲載)