ノーツ時代の終焉と新たな情報系システムへの模索 |
生協の情報システムが抱える今日的課題 第7回 |
グループウエアのノーツを導入したコープこうべでは、その基本機能のひとつである電子メールを積極的に活用することで組織内の情報伝達が大きく進化した。しかし、電子メールだけでは一対一、ポイントツーポイントの情報伝達に終わってしまう危険性をはらんでいたため、同時に電子掲示板も活用をはじめ、一気に情報流通を加速することができた。また、一部で実験的にワークフローも導入して業務処理の効率化も進めていた。
こうしたコープこうべの動きを受けて、日本生協連でもノーツを導入し、また、コープこうべをはじめ関西を中心に結成されていたKネット連帯機構でも、相互の情報伝達手段としてノーツを採用したことなどから、全国の生協へもノーツ導入の気運が高まり、二000年頃には生協全体のなかでノーツがデファクトスタンダードのグループウエアと位置づけられるまでになっていた。
ところが、ノーツというグループウエアはもともと大規模な組織に対応できるように、カスタマイズ(改造)することを前提として提供されているパッケージソフトで、標準で機能するものといえば電子メールと簡単な掲示板だけだった。機能としてはきわめて高度なものを有してはいたが、それを活用するためにはかなりの熟練した要員や外部ベンダーの支援を受けなくてはならないのが実態であり、それは現在のバージョンでも変わってはいない。そのため、ワークフロー機能なども本格的に活用されはじめたのは導入開始後5年近く立って日本生協連の商談システムなどに活用されたに過ぎず、単に高価な社内電子メールシステムとして現在も使い続けられている生協も多いと聞く。電子メール機能などはWindowsに標準で添付されているものでも充分であり、掲示板システムにしても、もっと高機能なものが無償で提供されている。また、すでに国産パッケージでは、最初からさまざまな機能やサービスを内蔵したグループウエアとして、サイボウズやデスクネッツがあり、日本生協連の共済部や大手生協の関連会社の社内システムとして成果を上げている。ただ、ノーツを導入した生協には最初に出会ったグループウエアとしてノーツに思い入れの強い職員も多く、ノーツ以外は検討の余地もないという姿勢を貫いているケースもあるようで、本来、業務改革、組織革新の情報系ツールとして位置づけられるべきグループウエアが、かえってそれを阻害してしてしまっているという。本当であれば本末転倒といわざるを得ないであろう。
最初にノーツ導入の決断をした人間がいうのは、はばかれるかもしれないが、時代の変化によって常にその時点での最適解は変わっていく。Webシステムがここまで情報系システムの基幹となってきた現在にあって、パソコン側にプログラムを必要とするクライアントサーバ型設計とさまざまな改善はされているが、インターネットやWebアプリケーションとの操作面の違い、利用者ごとに約一万円あまりというライセンス料などを考えるとき、そろそろノーツを見直す時期にきているといえるのではないだろうか。
では、これからの情報系システムはどういったものを考えるべきなのだろうか。基本的には、朝出勤してパソコンを立ち上げたときに最初に必要な情報やスケジュールなどが一覧できる情報の玄関口ともいえるポータル(EIP)が表示され、そこからさまざまな業務が開始できるというのが先進的な企業では標準的なビジネススタイルとなりつつある。専用のソフトがあるわけでなはなく、多くがオープンソースといって無償で提供されているWebアプリケーションを組み合わせることで実現可能なものばかりだ。特にこれからはXOOPS(ズープス)などのコンテンツマネジメントシステムをポータルとし、掲示板や電子会議室としてブログやSNSを活用することを考える必要があるだろう。ブログやSNSというと、一般ユーザーが使うもので、企業がビジネスで使うものではないと思われるかもしれない。しかし、今や時代は一般ユーザーが使えるものだから企業でも活用できるという考え方が当たり前となりつつある。まだまだ発想の転換は必要なのかもしれない。
(コープソリューション 2006年8月号掲載)