2007年2月12日月曜日

生協の情報システム、空白の10年(2)



生協の情報システム、空白の10年(2)
生協の情報システムが抱える今日的課題 第11回


  C-TOPIA(シートピア)プロジェクトは様々な面で生協の次世代を担うプロジェクトであった。情報システムの面においては、すべての基幹システムを旧来のホストコンピュータから分離して、オープン系のサーバコンピュータで構成されたシステム上で構築した。ここまで全面的なオープン系システムへの移行は、生協陣営では、ようやく数年前にとある事業連合で実現できたに過ぎない。ただ、この早すぎたチャレンジは、開発過程だけでなく稼働後も様々な試練をシステム部隊に課すことになった。当時のオープン系システムを扱う技術は、世界でもトップクラスの技術力を持ったソフトウエア企業しか有していない時代で、導入したパッケージソフトも世界中から取り寄せたものも多かった。少しでも障害があると国内だけでなく海外へも問い合わせをしなくてはならない場面もあったという。


 生協側のシステム要員も多くはホストコンピュータ育ちでサーバはおろか、パソコンすら詳細には熟知しているとはいいかねる力量と、組織文化の違うメンバーが集まったことによるギャップの大きさが彼らの前に立ちはだかった。しかし、そういった障壁を乗り越えていく中で、システムの共同化とプロジェクト運営の重要性を関わった組織やメンバーに浸透させたことは少ないながらも評価できる部分だろう。


 事業システムを構築するという面においては、従来のあり方にとらわれない、あるべき事業モデル、当時はまだビジネスモデルという言葉すら一般化していなかった時代に、真っ向から事業モデル作りに取り組んだプロジェクトの存在は特筆に値する。


 阪神大震災後になるが、プロジェクトの終盤近くになって、わたしも会議の末席に連ならせていただいたが、当時参加組織の常務で、違う組織ながら現在もご活躍されているKさんの事業モデル構築への強い想いとプロジェクト推進への指導力に深い感銘を受けたことを覚えている。それまでシステム一辺倒だった考え方を、大きく事業やその他の方面へと意識改革していただいたと感謝している。


 しかし、こうして基幹システムを次々と構築していったC-TOPIAプロジェクトだったが、店舗システム構築の途上で、ユーコープとコープこうべがそれぞれ独自にシステム化を進めることになり、共同システム化は頓挫することになってしまった。また、共同化の後に全国へ向けて展開を進めるはずだったが、それもまた結果を出せないままで終わってしまったことは生協陣営にとって極めて残念なことだったといえよう。


 成功していれば、まさしく生協版プロジェクトXとしてかの番組に取り上げられたかもしれないプロジェクトだったが、完全な失敗ではないまでも、途中で頓挫した原因とはなんだったのだろうか。現在も、まだ明確にこのプロジェクトを総括した評価は出されていない。次第に当事者が少なくならないうちに何らかの総括がなされるべきではないだろうか。
(次号に続く)


(コープソリューション 2006年12月号掲載)