2007年3月22日木曜日

生協の情報システム、空白の10年(3)



生協の情報システム、空白の10年(3)
生協の情報システムが抱える今日的課題 第12回(最終回)


 極めて雑薄な私見ではあるが、コープこうべとユーコープという当時の日本を代表する二大組織をベースにして共同開発を行うことに、最大の問題があったように思える。歴史もあり巨大であるが故に組織風土や組織文化にそれぞれ独特のものがあり、それらを整合させるというプロセスにあまりに多くの労力を必要とした。ではなぜ、その労をいとわずに二大組織をベースとしたかというと、どちらの組織も、みずからの事業モデルが普遍的なものでないという負い目を持っていたからではないか。もし、普遍的な事業モデルを確立出来ていれば、単独ででもプロジェクトを推進する力量はあったはずだ。しかしながら、どちらの組織も時間をかけ、積み上げてきた業務体系や事業システムがあり、その中には当然多くの矛盾や問題点を内包したままで拡大してきていた。近年、ERPシステム(企業の経営資源を統合管理するシステム)として大規模パッケージのSAPなどを大企業がこぞって導入している理由の一つは、それまでのしがらみを捨てて、国際標準の事業モデルや業務システムに自社を適合させるためというものがある。


 今更の感はあるが、どちらかの組織をモデルとしてシステム化を進めていれば、プロジェクトは成功裏に終わったかもしれない。だが、その場合、完成した共同システムにはベースとなった組織の内在している矛盾や問題点をそのまま引き継ぐことになっていただろう。本来めざしたものは、どちらの組織にも依拠しない、まったく新しいERPシステムだったはずだ。


 おそらく、それ以外にも、前回述べた阪神大震災の影響、バブル期といわれた好況期に開始されたプロジェクトが、バブル崩壊とともに両組織に余裕がなくなってきたことなど複合要件によって完成を見なかったのだろう。


 C-TOPIA以降、生協陣営では厳しい業績の中で事業の存続という生き残りをかけた取り組みにそれぞれの組織が専心せざるを得なくなって、共同化システムや統合化システムという動きは表面上は見えなくなってしまった。


 そして空白の十年が過ぎた。


 今、ようやく生協陣営に中に再び全国共同化システムの動きが出始めている。日本生協連とコープネット事業連合が中心となって進めている事業統合の動きだ。前回の轍を踏まず、事業連合とはいいながら、首都圏の大規模生協の統合を果たしてきたコープネットをパートナーとし、日本生協連が連合会の枠を越えて事業に進出するという新しいフレームの中で、今、遅ればせながら、日本の生協陣営の未来を見据えた共同化が始まろうとしている。


(コープソリューション 2007年1月号掲載)