2015年10月1日木曜日

延命を図りつつ独自のチャレンジも[連載第1回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時- 
コープソリューション2015年9月1日号掲載

2015年は、生協のインターネット事業においてひとつの節目の年となりつつある。

2008年から稼働したCWS(インターネット全国共同基盤)が第三世代へと切り替わるにあたって、CWSの最大の利用者であったコープネットが独自の基盤を構築することになったからだ。これで、パルシステム、コープこうべ、コープきんき、コープさっぽろと合わせ、上位から五つの生協・事業連合が独自の仕組みでインターネット事業を推進していくことになった。

2001年から始まった日生協が主導するインターネット共同基盤は、それぞれの生協が独自にインターネットの事業システムを運営することがまだまだ難しい時代であったことから、比較的簡易なシステム連携と手厚いサポートもあって、生協陣営におけるインターネット注文を大きく前進させる原動力となった。その功績は大きい。eフレンズというサービス名称もひとつのブランドとなって現在に引き継がれている。

その一方で、本格的Web対応システムとして登場したCWSでは、その導入過程で、これまでのような単純な注文機能だけではなく、組合員コミュニティやプロモーションへの取り組みを強化するなど、様々な要望が寄せられた。生協ごとのインターネット事業への取り組みスタンスの多様化が背景にはあったが、それにより、システムの機能としては肥大化と複雑化を招くことになり、稼働直後にいくつかの障害を引き起こすこととなった。

現在では改善され、安定稼働しているものの、運用には専門の体制と細心の注意とが求められる状況だ。また、共同基盤という性格上、それぞれの組織の意識や取り組みの変化には充分に対応できているかには異論も多い。

生協ごとのインターネット事業への対応が多様化する中で、EC(電子商取引)の進化は、各地の生協や事業連合でもある程度の規模や対応力があれば独自に自由なシステム構築が可能となってきており、また、これまで中心だった生協の宅配注文のWeb対応以外にも、ギフトやネット独自商品を扱うECショップなども盛んになってきている。

これは、CWSの導入当時から論議されていたことだが、生協の宅配事業がマス対応(大人数の組合員への同質の対応)であるのに対し、Webでは、個人を対象としたパーソナルなマーケティング(画面上に組合員の属性や購買履歴に応じた商品を個別におすすめする取り組み)が可能になる。こういった新しい分野への対応において、生協ごとにかなりの温度差があることなども、共同基盤の求心力に陰りが見え始めた一因ではないか。

ただ、CWS利用生協の中には、独自の取り組みは進めつつも、宅配のインターネット注文の基本的ツールとしての共同基盤はこれからも必要という声も少なくはない。それは、独自システム構築や維持への負担、長く運用されてきた共同基盤の安定性やコスト低減などへの取り組みを評価するからだ。

独自のシステムを運用している生協にも、ある特徴的な動きがある。それは、今秋から来春に欠けて、システムの更新時期を迎えた複数の生協が、大規模なシステム改修を回避し、機器の耐用年数と増加した利用者への性能面での対応という、いわゆる「延命」策をとったのだ。最初に第三世代と形容したCWSも、インフラ面での改修がほとんどで「延命」に近い。

こうした動きの中で、唯一、大規模なシステム改修を行っているのがコープネットだ。というよりも、生協陣営で最大規模であり、インターネット事業分野でも最大であるコープネットの新システムの動向が、他の生協をして当面の延命による模様眺めの状況を作り出したのかもしれない。

中核となる宅配のインターネット注文システムは当面延命を図りつつ、独自の取り組みに関してはそれぞれに挑戦をすすめていく。これが、インターネット事業の現状といえるかもしれない。

次回以降、どういった取り組みが始まっているのかを事例を含めて報告していきたい。