2016年12月1日木曜日

今、求められるインターネットガバナンスとは?[連載第15回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2016年11月1日号掲載

  多くの生協でインターネット事業を今後成長・発展させるべき重点課題と位置づけて、それなりの投資や取り組みを進めてきています。
  日生協のCWS共同基盤をはじめとして、基本的な宅配受注のツールとしてのシステム整備は、EC業界標準に比肩するものとして、いずれの生協においても着実に役割を果たしつつあります。
  しかし、各地の生協で、事業全体の中でインターネット事業がどれほどを占めているかというと、取り組みを先進的に長年続けている生協でさえ、宅配事業の20~30%。多くは10~15%です。しかも、その内訳はというと、宅配の注文手段、受注ツールとしての事業高がほとんどであり、インターネット本来の機能を生かしたり、組合員のライフスタイルの変化に即応していたり、といえる部分は、まだまだそう多くはありません。
  例えば、スマホの保有が過半を超えるような現状にあっても、受注システムはパソコンを基本とし、決してモバイルファースト(優先的にスマホ対応を進める)になっていないことは幾度か指摘したとおりです。
  生協独特の成功事例の水平展開という必勝手法が成り立つような取り組みが、この分野ではまだ数例しか存在しないことが一因なのかもしれません。
  こうした中で、いくつかの問題点が露見してきています。宅配の注文手段、受注ツールとしての整備は、取り組みの差はあるものの、おおむね充足されてきています。一方で、各生協のインターネット担当部局では、あらたな取り組みの一環として、ツールや仕組みの開発や改善を起案することを求められます。チャレンジ、あるいは、強化すべき分野という組織内コンセンサスのもと、事業規模に見合わない予算措置がとられることもあるようです。
  こういった場合、インターネット担当部局が、しっかりとした体制のもとで構成されていれば問題は少ないでしょう。だが、多くの場合、限られた人員、事業組織階層や他部署から比較的独立したポジションにあり、組織内の合意プロセスに乗っ取らず、牽制がかからないこともあるようです。あってはならないことですが、担当者の思い込みやアイデアレベルの施策が闇雲に承認されてしまうケースなどもあるようです。
  情報システム部門が関わっていれば、ITガバナンスが働く場合もありますが、概してインターネット分野は基幹システムからも距離を置いていることが多く、情報システム部門の関わりも限定的になってしまいがちです。
  2020年に向けた生協の供給事業の大きな潮目を迎えようとしているちょうど今、インターネットも、これからの生協の事業に貢献できる道筋を見つけ出す節目にさしかかっています。
  実験やチャレンジという不確定な言葉ではなく、具体的になにをめざしていくのか、どういった成果を獲得していくのかを明確にする姿勢を経営トップが示す必要があります。
  かつて、情報システム部門が経営層からブラックボックス化していた時代がありますが、現在は、システム監査やITガバナンスが徹底されています。
  インターネット事業は、まだまだ未開拓であり、技術的な動向や変化が激しい分野です。だからといって、経営トップは要員任せにすることなく、将来の事業の中核になるべきインターネットと向き合う必要があります。それがインターネットガバナンスです。
  どの生協・事業連合も2020年をひとつの区切りとして、事業計画を組み立てつつあります。来年度2017年度から3ヶ年の取り組みが2020年の生協の姿を決めるといっても過言ではありません。
  インターネット事業も同じです。2020年のあるべき姿を描きながら、2017年度からの3ヶ年計画を立案するべきでしょう。
  めざすべき事業の到達点、それに関わる投資や経費をどう捻出するのか。自分たちだけで算段できる分野ではありません。他の生協や外部との協力関係を築き、研究開発の投資を抑えることを考えます。生協独特の成功事例の水平展開という必勝手法をこの分野にも適用するべきでしょう。
  日々進化するインターネットの世界です。現状コストも見直せば、必ずカットできるポイントは見つかります。
  担当部局には、漫然と結果のみを報告するような姿勢ではなく、他の事業分や同様にPDCAのサイクルをしっかりと回していくような指導を行う必要があります。
  こういったインターネット分野へのガバナンスを徹底するためには、経営トップや管掌役員が、不可知の分野だと逃げ腰にならず、真正面から理解し取り組んでいくことも必須要件です。
   そのために、知識や業界動向でわからないことがあれば、わたしのような外部のちからをうまく活用するなど、柔軟にすすめていくことも。最後はやや宣伝めいてしまいました。