2017年2月1日水曜日

2017年、変化の兆候を見逃さない年に[連載第17回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2017年1月1日号掲載

  年の初めということで、やや前のめりかもしれませんが、この1年がどのように進んでいくかを考えてみましょう。
  ここ数年の傾向として、夢のような話として登場した技術や発想が、翌年には2割から3割が、その翌年にはもう2割から3割が実現、もしくは実用の域に達してくるということです。つまり、どんな奇抜なアイデアに思えた話であっても、2年後には約半数以上が現実のものとなっていることです。
  おそらく、今年、社会に大きな影響を与えると思われる技術のひとつが、IoTです。これまでも、IoTの概念として、生活空間にあるあらゆる製品にインターネットと結びつける機器が組み込まれるということは理解できても、電源をどうするか、通信手段をどうするかという、越えなくてはならない壁がありすぎました。けれども、この問題も、ボタン電池1個で10年近く稼働し、通信コストも問題にならない低価格な装置が次々に登場しています。
  IoT機器が、生協の事業分野や、組合員の暮らしの中に組み込まれはじめるのもおそらく今年からではないでしょうか。
  昨年末に日本にも登場したAmazonダッシュボタンのような特定商品の注文という単目的型のIoT機器もありますが、多くの場合、多様なセンサー技術を搭載したIoT機器が直接的ではない周辺情報を大量に収集します。隔靴掻痒の感はありますが、直接的に人間の行動をデータ化することには監視されているなどの拒否反応がありますので、間接情報から目的となる情報にたどり着くことが必要なのです。
  それに加えて、暮らし周辺情報においては、人間そのものが最大のセンサー端末であることも忘れてはいけません。センサーが読み取ったすべての情報を、ビッグデータとしてAI(人工知能)が処理するのは理想ですが、人間の知見や感性も重要なファクターになり得ます。
  冷蔵庫や食品庫の在庫管理と自動補充は、完全自動であるだけでなく、例えば、調理のときに、「お塩がそろそろ少ないかも」と云うちょっとしたつぶやき声を集めておいて、次の注文タイミングで提案することなどがあります。現状の音声認識だけでは、関係ない会話も拾ってしまい、必要のない家庭に紙おむつを提案するといった可能性もありますが、過去の購買行動や履歴、気候天候といったファクターも掛け合わせて考えれば、本当に求められる提案を導くことも可能になります。
  こうした、IoTで集められた各種のデータをビッグデータとして解析し、AIが処理や提案をしていくという図式は、これまでもお話ししたとおりですが、そういったものが今年より現実のものとなってくると思われます。
  その場合、データを処理する中核となるAIは、別の言葉で「深層学習」と呼ばれているとおり、様々なケースやパターンを投入して記憶させる必要があります。特に、対象が自然現象でない、人間の場合、その感性の部分までを学習させていかなければ適切な解釈や提案は難しいといわれています。
  わたしたちの暮らしに関わる判断の多くは、人間の感性によるところが大きくなります。そのため、AIや深層学習においても、そのベースとなる知識は、ある程度人間が形作る必要があります。
  いわゆる購買に関わるマーケティングの世界では、まだまだ充分な知識量が確保できていないと云われています。どのような条件のときにどのような購買が刺激されるのか、それを数多くの顧客に対して実践し知識を収集していくマーケティングオートメーション(MA)の普及が鍵となります。
  この連載でも、生協の中でのMAの研究や実験の取り組みを取り上げてきましたが、いよいよ、今年、実験や研究を終えて、実施段階に移行しようとしている動きがあります。
  ある調査では、これまで普及が遅れていた中高年齢層へのスマホ普及が加速しはじめたそうです。一因は、もはやガラケーが入手困難になりつつあるからのようですが、こうしてあらゆる世代にインターネットへのアクセス手段が広まった今年、様々な変化の兆候をとらえ損ねないよう情勢を注視しておく必要があります。
  そういった情勢を畏怖したりするのではなく、むしろ生協が、その先導役として進んでいくチャンスが到来していると考えれば、新年をわくわくとした心持ちで迎えることもできるのではないでしょうか。