2017年3月1日水曜日

フィンテックがもたらす変化とは[連載第18回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2017年2月1日号掲載

  年が明けて早くも1ヶ月が過ぎました。年末年始の対応であっという間とお感じになった方も多いでしょう。
  そうこうしている間にも、世の中は変化をし始めています。英・米を中心に脱EUやトランプ政権の成立など、反グローバリズムが台頭してきているように思えます。ネガティブなもののほうが報じられやすいメディアの影響もありますが、実は、グローバリズムがより浸透してきていることの現れではないかという見方もあります。
  そのひとつの兆候が、フィンテックと呼ばれる金融とテクノロジーやインターネットとの融合です。金融という言葉だけをとらえると、わたしたちのくらしとは縁遠い世界のように聞こえますが、フィンテックの進展によって、究極的には、銀行などの金融機関や円やドルといった紙貨幣が実態をなくしてしまうのではないかといわれています。
  わたしたちの周囲を見渡してみても、日常の買い物で電子マネーの普及は、レジの待ち時間を減らしたり、小銭を減らすといった効果だけでなく、同時にポイントサービスを受けられたりということで、広がりを見せつつあります。お店の側からも、無人レジなどの導入などのコスト削減になる電子マネーは、ポイントをつけてでも利用促進したいものです。
  昨年からiPhoneがおサイフ携帯機能を持ったことで、JR東日本のモバイルスイカの利用が急速に延びています。こうした、モバイル系電子マネーの特徴は、クレジットカードから直接チャージできることから、次第に現金の必要性が低下しています。
  すでに、諸外国では普及している個人間の少額決済サービスも、規制緩和で今年から導入が始まり、割り勘をスマホで決済できるといった、わかりやすいサービスから広まりつつありますが、フリーマーケットの支払いや、民泊、個人間のカーシェアなどシェアリングエコノミー系のサービスに広まることで、規制緩和とあいまって、決済の煩わしさが障壁となっていた様々な個人ビジネスを強力にあと押しするものになることは間違いないでしょう。
  この種の話になると、メディアを中心に、決済情報やシステムの安定性や安全性をネガティブにとらえる向きがありますが、実は、そこにこそフィンテックが、これまでの決裁システムと違うところあります。
  これまでの決済は、銀行などの金融機関それぞれが巨大なシステムを構築して運営していました。そのため、システムの障害などがあると社会問題にまで発展することもありました。しかし、フィンテックの中核技術である「ブロックチェーン」というのは、いくつものシステムが相互に情報を持ち合うことで、どこかで障害があったり、不正があったりしても、相互にカバーしたり、検知して是正することができる仕組みになっています。
  では、フィンテックによって生協のビジネスや組合員へのサービスはどのように変わるのでしょうか。
  長年にわたって、生協は組合員との支払いを銀行や郵貯の口座引落という方式に頼ってきました。商品代金や共済掛金の引き落としだけであれば、今後もこの方式で充分と思われるかもしれません。
  一方で、組合員へ提供する商品やサービスが多様化する中で、世帯でひとつの決済手段で充分かといえばそうではないはずです。主たる家計支出だけをこれからもターゲットにするのではなく、家族それぞれの支払いも意識しておく必要もあります。
  また、組合員間での少額決済も必要になってくると思われます。生活文化活動での有料講習、有償ボランティアなど、これからの場合、どこかで一定の代価を支払う活動が増えてきます。生協が集金するのであれば口座引落ですが、そのためには、ある程度の制度の整備やシステム構築も必要になります。
  おそらく、そういった場面で、最初に上げた少額決済サービスを利用するケースが出てくるのでしょうけれど、外部の決済サービスを推奨するのがいいか、生協自身がそういったサービスを提供するのか、どちらが組合員にとってより安心できるものかはいうまでもないと思います。
  こうした決済サービスに加えて、家計支出と口座管理を一体化させたサービスも登場してきています。資産管理とは、一部のお金持ちたちに必要なものという時代は終わっています。むしろ、生活に欠かせない家計簿の機能がより発展的にフィンテックと結びついて、家計支出から決済機能、資産管理までを提供するサービスとして組合員の生活に深く関わりながら、マーケティングやプロモーションといった購買行動を左右するものと結びつくことも、そう遠くないはずです。
  現在の金融機関もそうでしょうし、多くのビジネスプレイヤーがこの分野の覇権を狙ってくることは間違いないでしょう。そのとき、生協は単なる生活資材のプロバイダー(提供者)のままで大丈夫なのでしょうか。