2018年3月1日木曜日

スマートホームで暮らしはどう変化するか(1)[連載第30回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2018年2月1日号掲載

 毎年恒例のCES(米家電見本市)で、今年はスマートホーム(SH)が注目のひとつだったようです。かつては、ホームオートメーションとも呼ばれましたが、家電や各種センサーとの接続やクラウド上のAIと連携し、音声だけで家庭内のすべての家電を操作できるなど、未来の家庭生活がより現実味を帯びてきました。

■ CESとは

 CESという世界最大の家電見本市が毎年1月に米ラスベガスで開催されます。家電とはいいながら、近年ではパソコンからインターネット関連機器など、時代の先端を行く電子機器の総合見本市となっています。
 ハードウエア、ソフトウエアの基礎技術をベースとした概念実証型の展示会は他にもありますが、CESでは、より消費者に近い位置で、半年から1年以内には製品として登場してくる、現実味のある商品の見本市となっています。


■ 注目はスマートホーム

 今年のCESでは、IoTやAIなど、昨年までぼんやりとした概念だったものが、様々な製品として展示されていたようです。
 なかでも、注目は、スマートホーム(SH)です。SHの概念は、これまでも数多く提示されてきましたが、様々な最新製品を組み合わせてひとつの製品群として登場してきています。
 まず、構成される要素としては、各種家電製品が直接ネットワークと接続され、また、様々なセンサーが家庭内に配置されるIoT製品群の登場です。
 家庭内において、各種機器をもれなく、スキ間や切れ目なくインターネットと接続するためのメッシュ状ネットワークというインフラも整備されてきました。
 SHを構成する機器とネットワークが接続される先は、家庭内ではなく、クラウドコンピュータ上で稼働するAIであり、その知識の元となっているビッグデータなのです。

■ 有能な執事を雇うような

 こうしてインターネット上や家庭内から収集された各種情報を背景として、われわれ人間と対峙してくれる存在のひとつが、スマートスピーカーです。(AIがスピーカー内にあるような誤解を避けるため、AIスピーカーとは呼称しなくなっています。)
 クラウド上のAIと人間が会話する上で、パソコンのキーボードやスマホのタッチパネルよりも、音声のほうがより擬人的で抵抗感がないことは明らかです。
 よくいわれるように、有能な執事を雇っているとでもいいましょうか。AIがより学習していく中で、相手の言い回しのクセやいつも利用する内容を理解し、いわば「あうんの呼吸」といった関係がAIとの間で築けることが理想でしょう。
 もちろん、すべてが音声で返されるわけではなく、複雑であったり、情報量が多かったりする場合は、AIが判断してテレビやスマホの画面上に返すこともあります。それこそ、人間に対して「忖度」のできるAIが究極なのかもしれません。

■ スマートスピーカー市場の覇権は

 SHがこのレベルに到達するには、まだもう少しかかりそうですが、少しずつ近づこうとしていくのがこの1年だと思われます。
 おそらく、スマートスピーカーが普及するスピードのほうが、家電や室内への各種センサーの配備より早いと思われますので、当面はAIの機能を使った人間への情報提供、サジェッション(示唆、提案)、および、インターネット上への発信の代行からになるでしょう。
 様々な検索とその結果の回答、メールや電話の代理発信、ネット注文の操作の肩代わりなどが想像できます。
 スマートスピーカーというと、グーグル、アップルなどが有名ですが、最大のベンダーはやはりアマゾンです。スマートスピーカーのアレクサは、サードパーティー製も含めると、すでに百種類以上が販売されています。
 ネット通販最大手のアマゾンが、この分野に最大の力を入れているのは、スマートスピーカーがネット通販の世界の覇権を握るツールとなることを確信しているからに他ならないでしょう。
 ネット注文をAIに指示したときに、どこの商品を優先するか、そう遠くない時期にそのレベルからの争奪戦がやってくることを意識しておかなくてはならないのです。(つづく)