2018年7月1日日曜日

いずれが脅威か? アマゾンフレッシュとセブンミール[連載第34回]


 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2018年6月1日号掲載

 昨年あたりから食料品配達の分野に、新しいサービスが次々と登場してきています。ネットスーパーとも違うサービス形態もあり、生協にとっても、コンペチター(競合相手)となるか、今後の動向に注文が集まります。今回は、いくつかのサービスの動向を分析してみましよう。

■ アマゾンとセブンの登場

 最近、調査会社などからネットスーパーと生協というキーワードでのインタビューを受ける機会が何度かありました。
 多くの場合、最初は生協となんぞやから説明しなければならない程度の理解から入っており、その結果、生協のネットスーパーと彼らが思っているものは、概して宅配のことだったりします。
 ただ、彼らも、生協の宅配が週1回配送でしかないのに、通販事業でこれだけのシェアを誇っていることが不思議なようでした。
 生協の宅配はさておき、そうしたインタビューや意見交換の中で、彼らが今最も注目しているサービスが、一つは通販最大のプレーヤーであるアマゾンがスタートしたアマゾンフレッシュ。もう一つがネットスーパーの形態をとりながら、扱い品目がコンビニのそれでしかないセブンイレブンのお届けサービス「セブンミール」です。
 それぞれの詳しいサービス内容は検索いただくとして、その仕組みや特徴について見てみましょう。

■ ネックは宣伝と手数料か

 まず、アマゾンフレッシュについては、アマゾンが持つ全世界で1億人ともいわれるプライム会員をベースに、生鮮品をはじめとする食料品の配送サービスです。首都圏を中心にエリアを限定して1年前からサービスを始めています。この1年で、エリアの拡大があったこともあって、利用者は2倍に増加したという発表がありましたが、実数は公表されていません。
 配送サービスそのものは、プライムナウと呼ばれる即日時間指定配送サービスとほぼ同じ対応です。
 一番のポイントは、生鮮品の調達をアマゾン自身が行っているのはごくわずかで、ほとんどは生鮮品配送サービスを自社で行っているオイシックスドット大地や、ローカルサプライヤーの商品である点です。
 つまり、アマゾンは、サードパーティ商品の販売と配送事業者のポジションであることです。もとより、リアル店舗を持たないアマゾンがネットスーパー事業に参入する訳ですから、この参入方式は極めて妥当な戦略だといえます。
 ただ、このままでは、アマゾンフレッシュは、便利な食品配送サービスでしかなく、サービス競争が激化した場合に、これまでの通販分野のように優位性を保つことは難しくなる恐れがあります。
 特に、プロモーション分野ではクックパッドとの連携など取り組みを強化していますが、目新しさには欠けるようです。
 また、年間3千9百円のプライム会費に加え、フレッシュ会員になるには、月額5百円、(年間6千円)の会費が必要になることも、利用者のとっての抵抗感にはなると思います。

■ お手軽宅食の品揃え

 一方で、コンビニ最大手のセブンイレブンが展開している「セブンミール」の配達サービスですが、どちらかというと、お弁当などのお手軽お届けサービスという印象があります。
 店舗の取扱商品がもともとお弁当などの商材がほとんどですので、むしろ、夕食宅配などとの競合が考えられます。
 また、配送手数料も、四国地域を除いて5百円以上の利用で無料となるなど、少額購入に適した料金体系になっています。
 もちろん、一部の加工品以外の野菜、魚、肉など生鮮3品は取り扱いがありませんが、グループ傘下のファミレスのデニーズの商品をレストランメニューとして取り入れている点などはミールキット(調理食材)ではないものの、今後の需要の拡大は期待出来るように思えます。

■ 競合相手となり得るか

 生協の宅配事業から見たときに、意外な競合点になりそうなのが、例えば、ペットボトルの箱など重量物のお届けという、生協宅配が強みとしてきた利便性を模倣して、新規参入のサービスの認知度を高めてくることです。
 ネット注文での、サービスの使い分けや買い回りが増えてくることが懸念されます。
 そういう点で、今回取り上げたふたつのサービスは、直ちに生協の宅配にとっての脅威とまではならないかもしれませんが、物流、商品、システム、宣伝の4つの軸でベンチマークしていくことは重要だと思います。