2018年8月1日水曜日

AIのお試し利用って?[連載第35回]


 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2018年7月1日号掲載

 例えば、コールセンターの対応向上と負荷軽減は昔からの課題ですが、最近ではコンピュータが人間の代わりに対応してくれるチャットボッと呼ばれるサービスも増えてきています。これを支えているのがAI技術です。これからの社会にAI技術は不可欠のものですが、その正体は不透明のままです。でも、まずは試してみるのも理解が進む方法かもしれません。


 世の中には、いつの間にかじわじわと広がっていて、気がつくと当たり前のように使われているものというのが存在します。近年でいえば、インターネット技術などがそれかもしれません。
 ここ数年、インターネットに関わるキーワードとして喧伝されてきたものも同じような流れをたどっています。
 例えば、クラウドなり、ビッグデータなども、あまり言葉を聞かなくなったと思われたとすれば、もはやあまりにも当たり前になってきたため、社会全体にとっての基礎技術ともいうポジションにまで到達したからに他なりません。

■ 旬のキーワードはAI

 同じようなキーワードで、少し事情が違って、まだまだ喧伝され続けているのがAIでしょうか。クラウドやビッグデータが基盤技術で、どちらかといえば黒子役であるのに対して、AIは直接人間との接点があるフロントサービスであるためかもしれません。
 昨今、わたしたちの身近なところでもAIの技術を組み込んだ製品やサービスが多く登場していますが、その割に得体の知れなさについては相変わらずと言っていいでしょう。
 例えば、いくつかのセンサーと論理回路でエアコンの温度検知能力を高めた製品にもAIという名称をつける例などもあとを絶ちません。
 ただ、本質的なAIは、すでに社会全体に広くサービスとして展開されつつあります。
 それは、インターネットを基礎技術とし、クラウドコンピューティングを基盤とし、その上でビッグデータを用いた機械学習や深層学習によるコグニティブ(認知)機能が、ある程度容易に活用できる段階に入ってきたからだといえます。
 そのため、AIを導入、AIを活用、といった宣伝文句を冠した製品や各種サービスが幅をきかせてきているのも確かです。

■ 意外に身近になったAI

 そこで、AIをあがめ奉るのは、もはや本質ではないということを、いろいろな例を挙げ、すでに、AI技術はここまで身近で扱いやすくなってきていることをご紹介しましょう。
 AIを導入というと、何やら専門的なシステムを構築して、大がかりに導入するというイメージをお持ちだと思いますが、そんなことはすでに過去の話です。
 AIに関する様々な技術は、サービスとして提供されています。多くは、基盤サービスであるクラウドの一部として提供されていて、アマゾンが提供するAWS、マイクロソフトのアズール、グーグルのクラウドプラットフォームなどからも提供されていて、ほとんど、そのクラウドの利用料金プラスアルファで利用できます。

■ 1時間でAI導入の実験

 たとえば、AIの活用例でよくあるのがQ&Aのサービスを対話型でAIが答えるというものですが、マイクロソフトのアズールが提供する「QnAメーカー」というサービスであれば、エクセルで対応表になっている質問と回答の文章を読み込ませるだけで、自社独自の対話型Q&Aサイトが完成します。
 手順の解説サイトもありますので、専門的な知識なしでも1時間もあればできあがります。
 もちろん、この仕組みをいきなり組合員向けに公開するというものではありませんが、質問と回答の組み合わせによって、どのようにAIが回答するのか、質問する側の言い回しや不正確さをAIがどのようにカバーするのか、などを検証するのが最初でしょう。本格的なQ&Aサイトの前段階として社内向けに使ってみるなど、AIがどこまで対応してくれるものなのかを実体験できることも有効な使い方だと思います。

マイクロソフトAzureのQnAメーカーサイト









■ 事業サイドからの活用提案を

 組織の内部にクラウドやAIに精通した人材を擁しているというところはまれだと思います。それゆえに、外部からの提案を鵜呑みにしがちということもあります。
 じつは、AIは、もはやここまで手軽に試してみることができる状況になっていることを理解して、自分たちの課題をAIで解決できることはないかという観点で、システム部門やWeb関連の部局ではなく、事業部門、業務部門の皆さん自身が検討できる時代になっていることをご理解いただきたいと思います。