生協のインターネット事業-新たな挑戦の時
コープソリューション2019年2月1日号掲載
「ものづくり白書」といえば、製造業の現状分析や政策提言と思われがちです。ところが、いま、この白書にサービス業や流通業からも熱い視線が注がれています。「いまこそ変革の時!」をサブタイトルとし、「経営者必読!」とまで謳った内容に注目してみました。
「白書」というと、お役所が作成するもので、無味乾燥な役人言葉が羅列されているだけのものという印象が否めません。昨今は、統計処理の不手際もあり、お役所の公表物への信頼感にやや陰りが出ているのも実情です。
一方で、国全体の政策立案や運営に大きく関わっていることも確かですので、自治体や業界団体などからは注目をされてきたものでもあります。
そうした中で、いま、ひとつの白書が注目を集めています。それが、「ものづくり白書2018」です。
正式には、「ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告」という堅苦しい名前で作成は経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同執筆し、その名の通り、日本の工業を支える製造業の現状と今後について取り上げたものです。
バブル崩壊以降の空白の20年、景気後退やアジアシフトによる空洞化など、厳しい状況が続いてきたわが国の製造業を、もういちどよみがえらそうという政府や業界の強い思いを受けて若手官僚を中心にまとめられたそうです。
この数年、政府が国内商工業の活性化に強い意志を示し、特に新興国の後塵を拝していた製造業については、ITを中心にした「メイド・イン・ジャパン、ものづくり大国・日本」の再興をめざしてきています。

■ 求められる人材の質的変化
国の方針を受けて作成される白書には、これまでの成果を誇る傾向があるのですが、今回の「ものづくり白書」は、どちらかといえば、真正面から現状への危機感をあおっています。
まず、冒頭に、すべての経営者に4つの危機感を訴え、意識改革を求めています。
第1に、企業内の人材不足について取り上げ、これまでの量的不足だけでなく、質的な不足、すなわち、ロボティクスやAIの登場で、労働の内容が大きく変化していくことでの人材に必要なスキルの変化、特に、デジタルシフトが叫ばれている今日、デジタル人材の不足を警告しています。
注意しなくてはならないのは、ここでいうデジタル人材とは、コンピュータやパソコンなどに強いエンジニアだけを指すのではなく、それらを含め、デジタル思考、システム思考のできる人材という意味です。
■ 従来の「強み」が足かせに
次に取り上げたのが、企業が経営の柱とする「強み」です。経営において、自社の強みは最大限活用すべきポイントです。
ところが、時代や環境の変化を見誤り、「強み」と考えていたものにすがるあまり、変革のタイミングを失ってしまうことに警鐘を鳴らしています。
このことは、生協においても、かつて苦い経験をしてきたことに通じます。組合員との長年の信頼関係によって築かれてきた、「安心・安全」という最大の強みが、ひとつの事件によってもろくも崩れ去ってしまったことです。
イメージとしての「強み」に依拠しすぎたり、安住したりしてしまうことで、生協を取り巻く環境や組合員の意識の変化を見誤ることがないようにしなくてはいけません。
■ 大変革期を認識していない
ここ数年は景気も上向きといわれている中で、それを支えているひとつにデジタル化やIT化の成果があります。ところが、経営層の一部には、これをかつてのITブーム、ITバブルと同列視して、積極的な対応をためらっていると白書では評しています。
経済社会のデジタルシフトはもはや揺るがない事実であり、この大変革期に乗り遅れることは企業においては存続にすら影響するということでしょう。
■ 経営層主導による変革を
白書では、最後の危機として、これまでの自前主義、自分たちの中で課題を解決しようという考え方、提案を待って決断するというボトムアップ型の経営姿勢を限界としています。
業界横並びを重視したり、自社が最初にチャレンジすることを避けたりする意識は日本的といえる姿勢かもしれません。
また、ボトムアップ型というのはある意味、経営層の責任を回避しているという意見もあります。
もちろん、白書では現場力というものを高く評価していますが、あくまで、デジタル時代のデータに裏付けられ、システム思考やデジタル人材によって作り上げられる現場力であり、それを主導するのはあくまで経営層であるとも定義づけています。
さて、ここまでご覧いただいて、この「ものづくり白書」が、製造業だけに向けられたものとお考えでしょうか。
本編はなかなかのボリュームですので、概要版だけでもご覧いただければと思っています。
「白書」というと、お役所が作成するもので、無味乾燥な役人言葉が羅列されているだけのものという印象が否めません。昨今は、統計処理の不手際もあり、お役所の公表物への信頼感にやや陰りが出ているのも実情です。
一方で、国全体の政策立案や運営に大きく関わっていることも確かですので、自治体や業界団体などからは注目をされてきたものでもあります。
そうした中で、いま、ひとつの白書が注目を集めています。それが、「ものづくり白書2018」です。
正式には、「ものづくり基盤技術振興基本法第8条に基づく年次報告」という堅苦しい名前で作成は経済産業省、厚生労働省、文部科学省の3省が共同執筆し、その名の通り、日本の工業を支える製造業の現状と今後について取り上げたものです。
バブル崩壊以降の空白の20年、景気後退やアジアシフトによる空洞化など、厳しい状況が続いてきたわが国の製造業を、もういちどよみがえらそうという政府や業界の強い思いを受けて若手官僚を中心にまとめられたそうです。
この数年、政府が国内商工業の活性化に強い意志を示し、特に新興国の後塵を拝していた製造業については、ITを中心にした「メイド・イン・ジャパン、ものづくり大国・日本」の再興をめざしてきています。

■ 求められる人材の質的変化
国の方針を受けて作成される白書には、これまでの成果を誇る傾向があるのですが、今回の「ものづくり白書」は、どちらかといえば、真正面から現状への危機感をあおっています。
まず、冒頭に、すべての経営者に4つの危機感を訴え、意識改革を求めています。
第1に、企業内の人材不足について取り上げ、これまでの量的不足だけでなく、質的な不足、すなわち、ロボティクスやAIの登場で、労働の内容が大きく変化していくことでの人材に必要なスキルの変化、特に、デジタルシフトが叫ばれている今日、デジタル人材の不足を警告しています。
注意しなくてはならないのは、ここでいうデジタル人材とは、コンピュータやパソコンなどに強いエンジニアだけを指すのではなく、それらを含め、デジタル思考、システム思考のできる人材という意味です。
■ 従来の「強み」が足かせに

ところが、時代や環境の変化を見誤り、「強み」と考えていたものにすがるあまり、変革のタイミングを失ってしまうことに警鐘を鳴らしています。
このことは、生協においても、かつて苦い経験をしてきたことに通じます。組合員との長年の信頼関係によって築かれてきた、「安心・安全」という最大の強みが、ひとつの事件によってもろくも崩れ去ってしまったことです。
イメージとしての「強み」に依拠しすぎたり、安住したりしてしまうことで、生協を取り巻く環境や組合員の意識の変化を見誤ることがないようにしなくてはいけません。
■ 大変革期を認識していない
ここ数年は景気も上向きといわれている中で、それを支えているひとつにデジタル化やIT化の成果があります。ところが、経営層の一部には、これをかつてのITブーム、ITバブルと同列視して、積極的な対応をためらっていると白書では評しています。
経済社会のデジタルシフトはもはや揺るがない事実であり、この大変革期に乗り遅れることは企業においては存続にすら影響するということでしょう。
■ 経営層主導による変革を
白書では、最後の危機として、これまでの自前主義、自分たちの中で課題を解決しようという考え方、提案を待って決断するというボトムアップ型の経営姿勢を限界としています。
業界横並びを重視したり、自社が最初にチャレンジすることを避けたりする意識は日本的といえる姿勢かもしれません。
また、ボトムアップ型というのはある意味、経営層の責任を回避しているという意見もあります。
もちろん、白書では現場力というものを高く評価していますが、あくまで、デジタル時代のデータに裏付けられ、システム思考やデジタル人材によって作り上げられる現場力であり、それを主導するのはあくまで経営層であるとも定義づけています。
さて、ここまでご覧いただいて、この「ものづくり白書」が、製造業だけに向けられたものとお考えでしょうか。
本編はなかなかのボリュームですので、概要版だけでもご覧いただければと思っています。