コープソリューション2020年2月1日号掲載
こうした技術やソリューションをベースに、デジタルの力で、生協が関わる様々な事業やサービスをより収益性のあるものへとリビルド(再構築)できないかを考えてみましょう。
■ 自動運転は実用期に
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画像出典:カルモマガジン
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今年のCESにおいては、自動運転はもはや新しい技術ではなくなっていました。
すでに確立された技術としての自動運転があり、それによって構成された移動機器、移動するためのベースとして自動運転のモビリティが登場しました。いくつかの実例が登場してきていますが、その中でも目立ったのが、自動運転でコントロールされた台車のようなものです。この台車に人が乗る座席やルーフを乗せれば小型のバスや移動手段になります。この台車の上に小さなお店を載せれば移動販売のお店が出来上がります。つまり台車という土台の上にどのようなサービスを乗せるかというのは利用する側、あるいはサービスを提供する側の自由な発想に任せられているということです。
移動手段(Mobility)とサービス(Service)を自由に組み合わせることが可能になってきたわけです。
このように、これまでのビジネスの形や概念が、大きく変わりつつある中で、こうした新しいソリューションやサービスモデルを、生協の事業に当てはめてみると、様々なことが考えられるようになります。
■ 着目すべき生協のビジネス
その際に、どうしても事業の改革や未来志向というと、現状の宅配事業や店舗事業を意識しがちですが、それ以外にも生協の中にはたくさんのサービスが存在していることに着目すべきだと思います。
もちろん、ここでいうサービスの中には、あまり収益が見込めないようなサービスも数多くあります。社会貢献や組合員貢献という意味合いで提供しているものも多いはずです。
しかし、新しいビジネスのモデルを構築することでそれが収益事業としても成立し組合員に対しても、有益なサービスになることも考えられます。 例えば、MaaSを活用するとすれば、以前にも取り上げた、移動販売が考えられます。
現在の移動販売は、どちらかといえば、買い物難民対策というところに主眼が置かれて、収益よりもボランティアの要素が強いものとなっています。営業エリアも。店舗のない郊外が中心で、販売地点までの移動にかなりの距離と時間がかかってしまい、それによる燃料費や人件費などの負担が収益を圧迫してしまいます。
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画像出典:日本生協連HP |
■ リビルドによってめざすもの
スマートストアのように無人で販売できることが理想ですが、当面は商品の補充・管理やチェックアウトを担当する人間がひとり乗車しているだけとし、一定のコースで地域の中を巡回するような移動販売ができるのではないかと考えます。
現在どこの場所を走行しているかという情報を地図上に表示することで、利用者はスマートフォンで現在の場所を確認し、近くに来る時間に路上に出て買い物をすることができます。
また、決められたルート走行するだけではなく、近くに来てほしいというリクエストをスマートフォンから発信して、移動販売の方がルートを変更して、利用者の近くまで移動して行くという、オンデマンド販売の方式も考えられます。
MaaSは基本的にEV(電気自動車)を前提としていますので、燃料費については大きく削減が可能です。人件費についても、運転は必要がないため、シルバー人材や、短時間のパートタイマーの活用することも可能です。
こうした取り組みで、移動販売をビジネスモデルとしてリビルトすることが可能になるのではないかと思います。
移動販売に限らず、生協は組合員さんのニーズによって様々なサービスを提供しています。これまでは、ビジネスとは言えなかったようなサービスもデジタルを活用することで不採算とまではいいませんが、収益性の低い事業を、より儲かる事業にリビルドしていくことは可能でしょう。今後、生協の成長を支えるビジネスの一角を担うことができるようになるかもしれません。