ネットショップ担当者フォーラム
「9億人のお客様といかにつながるか~リアル小売業のネットビジネスへの挑戦~」
イオンeコマース事業CEO 小玉毅 氏
2012年12月6日(木)10:00~10:40
これまで、国内最大手として小売業界をリードしているイオンですが、あまりECに関しては名前が出ていなかったことが不思議でした。
たしかに、昨年春にNTT西日本などと組んで「手のひらにイオンスーパー、主婦目線のタブレット活用「暮らしサポートサービス」開始」などの取り組みもありましたが、その後はあまりうわさを聞かない状況だったのも事実です。
今回のセミナーでは、小玉氏自身いわく、「eコマース事業では最後発のイオン」がどう取り組んでいこうとしているかが興味のあるポイントでした。
まず、最初の視点は、「リアルビジネスからみたネットビジネス」ということでした。9億人のお客様とつながることの意味を考えたそうです。9億人と は、イオンのショッピングモールの年間レジ通過客数で、昨年度国内小売業ナンバーワン。さすがに、サイトのページビューくらいでしか登場しない数字の大き さです。
なぜ、こういった数字を上げたかというと、ショッピングモールには、人間同士をつなぐ役割があると考えているからだそうで、Webでもお 客様とつながること、それがネットビジネスの第一歩ではないか、とのこと。この考えの背景として、宮台真司著、新書『日本の難点』(幻冬舎新書)にあるフ レーズ「これからの消費は物語なんだ。」という言葉を上げていました。
また、ショッピングモールは様々な場を提供している。例えば、東北の被災地でSCを避難所として提供した事例、これらも、本社の指示ではなく現場判 断だったというエピソードを挙げ、そういった場の提供をいわゆる祖父母、父母、子供の3世代にわたって展開することができるとも考えていると話していまし た。
余談ですが、1758年(宝暦8年)岡田屋として創業し254年が経過しているイオンですが、250年以上続いている会社は日本でも50社程度。ほとんどが技術の会社でサービス業の会社ではないということでした。
では、今回のWebへの展開をどう位置づけているかについては、いわゆるデジタルシフトとして、アジアシフト、都市シフト、シニアシフトとあわせて イオンの4シフトと呼んでいるそうです。たしかに、流通業界では、Webでは最後発です。ただし、ある評論家曰く、再後発にして最大規模、つまり、最後に 登場する横綱や真打ちにみずからをなぞらえているのでしょう。イオンならではの自信を感じさせます。
キャッチコピーも「ネットのイオン始まります」。こうしてイオンスクエアがスタートしました。広告会社は博報堂だそうです。
ね らいは、お客様が集う場所にしたい。最大の特色は、リアル小売業のサイトでありながらECサイトにしていないこと。実は、これは、苦し紛れに考えたこと だったそうですが、ECサイトは、ネットスーパーなどでも展開しており、今回はもっと遠大な構想でスタートさせたようです。
その一番目は、共通ID。これまでも、さまざまなWebサイトやECサイトはあったのですが、これを統合、共通ID、共通決済にしました。
共通IDは、約700万IDでスタートし、現在は3200万IDとなっているそうです。
ひとつのIDでリアルからWebまで、顧客の行動管理ができることなどから、ゆりかごから墓場まで一生涯にわたってのサービスを志向しているということでした。
その他の取り組みとして以下のようなものがあるようです。
WAON通貨圏…地域の様々な団体や行政と取り組みを進めているようです。いわゆる地域通貨構想に相当していながら、電子マネーとしても国内最大になっています。
長時間滞在…長く滞在してもらうと売り上げが伸びるというのは、ショッピングモールもWebも同じではないかという仮説から取り組んでいます。
記憶に残る情報発信…グリコポッキーとのタイアップ企画では、売り上げ4倍増を実現しました。このことからブランドとの接触時間が重要だとわかりました。
デジタルサイネージやレジそのものが情報発信機会になってきています。レジは、全国で3万台もあるので、情報発信としては有力ツールになると考えています。
ショッピングモール内で、さまざまな位置情報を検索できる機能は、スマホで簡単に売場や商品ショップが検索できるツールとして提供しています。
小玉氏が次の一手として考えていることとしては、O2O(ONLINE to OFFLINE)は売り手発想で、All Line発想、お客様は様々な形でつながっていることを前提にしてビジネスモデルを組んでいかなくてはならないということ。
日本における100兆円のコモデティは今後多くは増えないし、今後、その1割がネットに流れると想定されるそうです。ネット企業はリアルに出たがっている。一方、リアル企業はその逆。お客様が興味を持ったときにどうつながれるかがポイントになるだろうということでした。
ネットとリアルを経験してわかったことは、両者が同じではないということだそうです。
顧客の期待度も全く違う。店頭での顧客は大変厳しい。 妙な言い方だが、ECの世界ではそうではなく、ある程度あきらめる雰囲気があるということ。この発言には納得できる部分とできない部分とがありましたが、 消費者の側がある程度判断したことで、自己責任を感じているのがネット、店任せなのがリアルという意味なのかとも思いました。
リアルのショッピングモールは買うつもりがなくても来店する。遊びに行って時間を楽しむ場所。これをネット上で実現できないか。その一方で、忙しい ときは検索エンジンや価格比較サイトをうまく活用する。これがリアルとネットの融合という意味ではないかと小玉氏は考えているようです。
また、安心して買ってもらうために、本来の小売業の役割は、「消費者代位機能」…小売業者が消費者に成り代わって目利きの機能を発揮するというもので、その意味でネットは、代位機能を果たしているか、ただ商品を並べればいいのかという疑問もEC側に提起していました。
単にイオンがECに同取り組みかというテクニカルな問題ではなく、ネットとリアルの関わりをこれからどう考えるかという点で、いくつかの示唆に富む 指摘や提言があったセミナーでした。40分という時間と内容を比較して、かなりプロフィットの大きかったセミナーだったと感じました。
「9億人のお客様といかにつながるか~リアル小売業のネットビジネスへの挑戦~」
イオンeコマース事業CEO 小玉毅 氏
2012年12月6日(木)10:00~10:40
これまで、国内最大手として小売業界をリードしているイオンですが、あまりECに関しては名前が出ていなかったことが不思議でした。
たしかに、昨年春にNTT西日本などと組んで「手のひらにイオンスーパー、主婦目線のタブレット活用「暮らしサポートサービス」開始」などの取り組みもありましたが、その後はあまりうわさを聞かない状況だったのも事実です。
今回のセミナーでは、小玉氏自身いわく、「eコマース事業では最後発のイオン」がどう取り組んでいこうとしているかが興味のあるポイントでした。
まず、最初の視点は、「リアルビジネスからみたネットビジネス」ということでした。9億人のお客様とつながることの意味を考えたそうです。9億人と は、イオンのショッピングモールの年間レジ通過客数で、昨年度国内小売業ナンバーワン。さすがに、サイトのページビューくらいでしか登場しない数字の大き さです。
なぜ、こういった数字を上げたかというと、ショッピングモールには、人間同士をつなぐ役割があると考えているからだそうで、Webでもお 客様とつながること、それがネットビジネスの第一歩ではないか、とのこと。この考えの背景として、宮台真司著、新書『日本の難点』(幻冬舎新書)にあるフ レーズ「これからの消費は物語なんだ。」という言葉を上げていました。
また、ショッピングモールは様々な場を提供している。例えば、東北の被災地でSCを避難所として提供した事例、これらも、本社の指示ではなく現場判 断だったというエピソードを挙げ、そういった場の提供をいわゆる祖父母、父母、子供の3世代にわたって展開することができるとも考えていると話していまし た。
余談ですが、1758年(宝暦8年)岡田屋として創業し254年が経過しているイオンですが、250年以上続いている会社は日本でも50社程度。ほとんどが技術の会社でサービス業の会社ではないということでした。
では、今回のWebへの展開をどう位置づけているかについては、いわゆるデジタルシフトとして、アジアシフト、都市シフト、シニアシフトとあわせて イオンの4シフトと呼んでいるそうです。たしかに、流通業界では、Webでは最後発です。ただし、ある評論家曰く、再後発にして最大規模、つまり、最後に 登場する横綱や真打ちにみずからをなぞらえているのでしょう。イオンならではの自信を感じさせます。
キャッチコピーも「ネットのイオン始まります」。こうしてイオンスクエアがスタートしました。広告会社は博報堂だそうです。
ね らいは、お客様が集う場所にしたい。最大の特色は、リアル小売業のサイトでありながらECサイトにしていないこと。実は、これは、苦し紛れに考えたこと だったそうですが、ECサイトは、ネットスーパーなどでも展開しており、今回はもっと遠大な構想でスタートさせたようです。
その一番目は、共通ID。これまでも、さまざまなWebサイトやECサイトはあったのですが、これを統合、共通ID、共通決済にしました。
共通IDは、約700万IDでスタートし、現在は3200万IDとなっているそうです。
ひとつのIDでリアルからWebまで、顧客の行動管理ができることなどから、ゆりかごから墓場まで一生涯にわたってのサービスを志向しているということでした。
その他の取り組みとして以下のようなものがあるようです。
WAON通貨圏…地域の様々な団体や行政と取り組みを進めているようです。いわゆる地域通貨構想に相当していながら、電子マネーとしても国内最大になっています。
長時間滞在…長く滞在してもらうと売り上げが伸びるというのは、ショッピングモールもWebも同じではないかという仮説から取り組んでいます。
記憶に残る情報発信…グリコポッキーとのタイアップ企画では、売り上げ4倍増を実現しました。このことからブランドとの接触時間が重要だとわかりました。
デジタルサイネージやレジそのものが情報発信機会になってきています。レジは、全国で3万台もあるので、情報発信としては有力ツールになると考えています。
ショッピングモール内で、さまざまな位置情報を検索できる機能は、スマホで簡単に売場や商品ショップが検索できるツールとして提供しています。
小玉氏が次の一手として考えていることとしては、O2O(ONLINE to OFFLINE)は売り手発想で、All Line発想、お客様は様々な形でつながっていることを前提にしてビジネスモデルを組んでいかなくてはならないということ。
日本における100兆円のコモデティは今後多くは増えないし、今後、その1割がネットに流れると想定されるそうです。ネット企業はリアルに出たがっている。一方、リアル企業はその逆。お客様が興味を持ったときにどうつながれるかがポイントになるだろうということでした。
ネットとリアルを経験してわかったことは、両者が同じではないということだそうです。
顧客の期待度も全く違う。店頭での顧客は大変厳しい。 妙な言い方だが、ECの世界ではそうではなく、ある程度あきらめる雰囲気があるということ。この発言には納得できる部分とできない部分とがありましたが、 消費者の側がある程度判断したことで、自己責任を感じているのがネット、店任せなのがリアルという意味なのかとも思いました。
リアルのショッピングモールは買うつもりがなくても来店する。遊びに行って時間を楽しむ場所。これをネット上で実現できないか。その一方で、忙しい ときは検索エンジンや価格比較サイトをうまく活用する。これがリアルとネットの融合という意味ではないかと小玉氏は考えているようです。
また、安心して買ってもらうために、本来の小売業の役割は、「消費者代位機能」…小売業者が消費者に成り代わって目利きの機能を発揮するというもので、その意味でネットは、代位機能を果たしているか、ただ商品を並べればいいのかという疑問もEC側に提起していました。
単にイオンがECに同取り組みかというテクニカルな問題ではなく、ネットとリアルの関わりをこれからどう考えるかという点で、いくつかの示唆に富む 指摘や提言があったセミナーでした。40分という時間と内容を比較して、かなりプロフィットの大きかったセミナーだったと感じました。
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