2016年3月1日火曜日

シェアリングエコノミーの可能性と生協[連載第6回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時- 
コープソリューション2016年2月1日号掲載

訪日外国人の急激な増加によって、最も影響を受けているのは、出張を常とするサラリーマンではないでしょうか。そういう筆者も東京でのホテルが確保しにくくなり、日帰りを余儀なくされたりしています。

こういう事態への対応として登場してきたのが「民泊」で、羽田空港に近い東京都大田区などを特区に指定して旅館業法の規制を緩和するなどにより民泊を広めようとしていることなどはご存じの方も多いでしょう。

こうした規制緩和を待たずして、すでに日本国内でも民泊は広がりを見せているのが実態です。民泊というのは、自宅や所有する不動産に空き室などがある場合にこれを有効活用するというもので、海外では古くから提供されているサービスのひとつです。

これをよりグローバルなサービスとして展開してきているのがAirBnB(エアービーエヌビー)と呼ばれるインターネット上のサービスです。AirBnBは貸し出すことのできる部屋を持っている提供者がサイト上にその情報を公開して借り手を募集し、借りたいひとはそのサイト上で希望の物件を予約する、というものです。仲介に当たって、料金などの決済手段やトラブルへの対応などのサービスを付加することで、提供者と利用者の利便性を図って手数料を得るというモデルです。

民泊という文化が根付いていない日本においては、法整備やルール作りが、これから必要ですが、オリンピックのようなピーク型イベントへの対応策として期待されるサービスです。

同様のサービスとして、タクシー配車のUber(ウーバー)があります。マイカーと自分の空き時間を登録して、予約が入ると、目的地まで利用者を送迎するものです。日本の場合、マイカーは白タク営業と見なされるため、タクシーに限定したサービスとなっています。

こうしたサービスを総称してシェアリングエコノミー(共有型経済)といい、サービスの形態は様々ですが、リソース(資源)を持つひとと、利用したい人を、インターネットを介して結びつけ、これまでであれば買うようできなかった資源を有効に活用しようという経済活動なのです。

リソースの特徴は、部屋や車、空き時間のある駐車場といったモノのリソースが思い浮かべられますが、実は最も大きなものは人的リソース、いわゆる、ひとの空き時間なのです。

自分の空き時間を有効活用してもらえる仕組みがあれば、それを提供したいと思っているひとは多いはずです。

ところが、時間単位の空き時間などを活用することなど、今までであれば思いもつかないところですが、そういったひとりひとりの微少な空き時間をうまくマッチングさせることのできる仕組みがインターネットだったわけです。

以前、ご紹介したインスタカートも、自分がスーパーで買い物するついでに、誰かの買い物を手伝って自宅まで届けてあげるという、ごく些細な頼まれ仕事から発想されたサービスです。

最新の情報では、アメリカでは、インスタカートだけでなく、同種のサービスが複数に広がりを見せているということで、いずれ日本にも入ってくることは必至です。

こうしたシェアリングエコノミーの仕組みは、より広くたくさんのリソース提供者と利用者を結びつけるところから、インターネットを介することによって初めて成立するものです。ただ、逆に考えれば、仕組みだけでは、成り立つだけのリソース提供者や利用者は集められないということにもなります。

現代の社会ですから、ある程度大規模な広告を打つことで初動の集客は可能かもしれませんが、サービスそのものの利便性や魅力がないと長くは続きません。そういった意味で、シェアリングエコノミーは生態系(エコシステム)のように自己増殖できるような仕掛けになっていなければならないものでもあります。

生協の事業はまさしくシェアリングエコノミーとして発祥し、エコシステムとして増殖拡大してきたところではありますが、巨大化し専業化する中でややシェアリング(共有)の精神が失われてきた感は否めません。ただ、再びシェアリングが見直され、インターネットという手段を得てエコシステムとしての自然増殖の可能性を取り戻せる時代にさしかかっていることはまちがいないと思います。

ひとつの事例としては、コープ東北で行われているタブレット先生によるタブレット講習会の活動が、生協が長年培ってきた、教えあい、学びあいの精神をシェアリングエコノミーの形で具現化したものといえるかもしれません。


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