2017年4月1日土曜日

フィンテックがもたらす変化とは(2)[連載第19回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2017年3月1日号掲載

  新幹線で移動していると、ひと昔前に比べて、新聞を読んでいる人がほとんどいないことに気がつきます。また、パソコンで仕事に打ち込むひと、タブレットで動画らしきものを視聴するひと、スマホを操作する姿など、当たり前過ぎるのが車内の風景です。
  すでに、世の中は、ネットと何かをつなぐという時代から、ネットを介して、さまざまなサービスがつながり、融合していく時代へと進化してきています。
  前回お話ししたフィンテックの活用形としての家計管理の話をもう少し掘り下げてみましょう。
  家計の管理というものを俯瞰してみますと、かつては、現金で給与を受け取り、支出も基本は現金。費目別に区分けして、家計簿をつけて管理するというのが一般的でした。
  今日ではどうでしょう。給与などの収入を現金で受け取るというのは、まずあり得ません。また、支出も、ECなど、電子決済が増えていますし、電子マネー、クレジット支払いなど、かなりの部分において金融機関を経由しますし、現金で支払っても、断らない限りレシートなどの証憑が返ってきます。
  つまり、個人のレベルにおいても、ありとあらゆるお金の動きが情報化され、記録されてきているわけです。
  情報化されているという点では、お金の動きだけでなく、その目的、どこから収入があり、何に支出したかが、かなり克明に記録されていることは既知の事実です。
これまで、こうした購買情報などは、情報を収集した企業などがマーケティングや販売計画などに活用するということが一般的でしたが、利用者側にも提供して活用しようという動きが徐々に広まってきています。
こういった情報を生かす形で、家計簿を自動的に作成しようという試みは、すでにかなり以前から取り組まれています。
特に、共同購入と点のを複合的に展開している生協では、家計支出のかなりの情報を保持していることもあって、他の支出を保管することで、家計簿を完成させることができることから、スマホ向けの家計簿アプリを提供している生協もあります。
独自でアプリを構築する手間やコストを削減する一方で、生協以外での買い物情報も網羅できる可能性などを踏まえて、オープンな家計簿アプリに生協での購買情報を連携しているケースもあります。大日本印刷が提供するレシーピというアプリがそれで、すでに、いくつかの生協で導入事例があり、今後、広がりをみせそうです。レシーピそのものは、無料の一般公開アプリなのですが、提携している生協の組合員は、eフレンズのIDなどでログインすることで、生協でのすべての利用実績がアプリに送信され、他の販売店で購入した商品については、レシートをカメラで撮影するだけで情報が取り込まれるというサービスです。
ただ、これまでの生協での取り組みは、主に支出、それも消費支出を中心にとらえており、どうしても、マーケティングや販売計画寄りの印象がぬぐえません。
  今日的な家計簿では、電子マネーがどのカードにいくら残っているか、ポイントはどのくらい貯まっているかということも重要です。
  収入や現在高などの情報を金融機関やクレジット会社、電子マネーからポイントサービスまでと連携して、家計支出のみならず、資産管理を含めた家庭経営全般を支援してくれるサービスが始まっています。
  代表的なサービスとしては、マネーフォワードなどがそれです。元はクラウド型の会計ソフトサービスでしたが、中小企業だけでなく、個人の資産管理まで対応できるサービスとしてシェアを広げてきています。
  現状ではクレジットによる支出に関しては、品目などは把握できないという欠点がありますが、ここでもレシート撮影などには対応しています。ECからの支出にも対応すれば、家計支出面でも、一気に現状の家計簿ソフトを凌駕する可能性があります。
  こうした動きに対して、生協側の動きは、まだまだ迅速とは言い難いものがあります。もちろん、他の量販店についても同様です。
  この種のサービスは、先に連携モデルを構築した方が有利です。生協が持つ、家計支出、共済などの保険情報といったものをこう知ったサービスと連携することで、家計というキーワードのもとでの、あらゆる管理が可能になります。まさに、「ゆりかごから墓場まで」を地で行くサービスとなり得るでしょう。
  生協がサービス提供者の一翼を担うことで、生協にとっても、組合員の暮らしに関わるあらゆる情報をもとにした最適なサービス設計や提供が可能になります。
  これが、生協がめざすべきフィンテックのひとつの姿ではないかと思います。

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