コープソリューション2019年9月1日号掲載
同社は、自分たちはもはや自動車メーカーではなく、移動に関わるあらゆるサービスを提供する会社に変貌することをめざしているといいます。
MaaSとは何をもたらそうとしているのか、それが、小売業にどのように関わってくるのかを俯瞰し、前回の移動スーパーという業態のあり方を考えてみます。
■ 配車もパーソナライズ
先日、米、配車サービスのUberが配車コマースのCARGOと提携するという報道がありました。配車コマースというのは、タクシーやUberのような移動手段である車の中に、コーヒーやお菓子などの商品を入れたボックスを設置しておき、購入した代金を運送代金と同時に決済し、手数料をドライバーに還元するというものです。
トヨタ自動車は、Uberの、さらにその先を見据えていて、空港までの配車を予約したひとには、旅行グッズなどを品揃えしたコンビニエンスカーを手配するといった構想もあるようです。
日本の場合、まだまだ規制が厳しいこともあって、なかなかスタートの緒にもついていない状況ですが、すでにアメリカなどでは自動運転が普及する時代を見越しながら、新しいサービスや業態が次々と登場してきています。
■ 自動運転が実現すると
自動運転が普及した社会において、運転という行為がなかったら、ひとは何をするでしょうか。
例えば、スーパーに向かう車内で車載端末やスマホから欲しい商品を注文し、代金決済まで済ませます。
到着したら、手ざわりや鮮度といった画面で確認できなかったものだけをチェックし、あとは持ち帰るだけ、という買物スタイルも考えられます。
列車や飛行機のように公共空間ではない自動車内だからこそ、期待されるサービスかもしれません。
自動車業界のトレンドは、接続(Connected)、自動運転(Autonomous)、共有(Shared)、電気化(Electric)の頭文字をとってCASEと呼ばれています。
■ MaaS時代の小売業
例えば、小売業に関連したCASEのコンセプトイメージは、次のようなものです。
食料品からファッションまで、様々なカテゴリーの商品を車両ごとに品揃えしたワンボックスやマイクロバスサイズの自動運転の電気自動車が、デジタルサイネージを兼ねて街の中をゆっくり巡回しています。
顧客からの呼び出しで玄関先にまで到着するとそこで買物ができ、インターネットと接続された車載端末などで決済まで行われます。車内は基本的に無人で、AIやコールセンターがネット越しに質問やおすすめを行います。
まさに、「店舗が顧客の元へやってくる」時代が到来するというイメージです。
小売りに限らず、美容院、携帯ショップ、病院、行政窓口といったサービスも移動ショップになってくるでしょう。
■ 新たなチャネルとしての移動店舗
もちろん、すべての店舗がそうなるわけではありません。都心型の人口集中地域や郊外の大型ショッピングモールがなくなることはありません。
しかし、よりパーソナライズされたセレクトショップや同じようなサービス提供についていえば、ECの次の手段として移動店舗というチャネルが増えてくるのではないでしょうか。
もちろん、現在の移動スーパーが求められている買い物難民対策という側面もますます重要となります。
事業コストという観点からは、将来的に自動運転も視野に入れる必要があります。その場合、無人ということばかりでなく、運転を伴わないことから、高齢人材の活用も可能です。
■ 新たな事業チャネルとして
また、なによりも安定した事業のための収入確保という面からは、現時点でできうる対策があります。
まず、予約注文のシステム化です。コールセンターやECによる事前予約は手段として確保しつつ、移動店舗の担当者に口頭やメモで依頼される予約を効率よくデジタル化することが必要です。
担当者が予約を負担と感じないことで、顧客もより気軽に予約をできるようになり、購入金額の増加が見込めます。
あわせて、利用者と利用内容をデータ化することも必要です。もちろん、ここでもタブレット型のスマートレジなどを導入し、1日百人未満の利用者をタッチで管理することなどで担当者の負担を減らします。
予約のメモは、担当者がその場でタブレットに話しかけ、音声認識でデータ化します。
ITの側面支援によって、担当者の個人力量に左右されない安定した売上増加が見込めれば、パートタイマーによる半日コースを組み合わせるなど、さらなる事業コストの削減により事業展開のハードルは下がるものと思われます。
ぜひ、新たな事業チャネルとして、さらなる将来を見据えて移動販売を見直していただきたいものです。