コープソリューション2020年1月1日号掲載
Webデザインは、課題解決のために最も重要と言われていますが、デザインという言葉に惑わされて、美術やアートの分野の話のように思っているみなさんが多いようです。実はWebデザインは、ビジネスモデル全体の検討の話にも、かなり通じるところはあります。
今回は、Webサイトのあるべき姿、いわゆるWebデザインを例題として、サイトのあり方とビジネスの関係などについて考えてみます。
■ Webサイトの存在価値を決める

しかし、店舗を例に挙げるだけでおわかりの通り、来店誘導だけで売り上げが向上したり、ビジネスモデルが成立したりするわけではないことは明らかです。
まず、そこで展開されている商品販売やサービス提供などのビジネスモデルが来訪者に受け入れられることが重要であり、通常は、まず、何を売るか、どうサービス提供するか、という切り口からビジネスが検討され、その実現手段としてのWebサイトがあり、そこへの来店誘導があるわけです。
一般に、Webデザインというと、画面の色目や画像の配置といった純粋なデザインを思い浮かべがちですが、より広義にとらえると、Webサイトの機能や目的、ビジネスモデルにおける存在価値までを考えるのがWebデザインです。
どうしても、トリッキーな見た目や新しい機能に傾注しがちですが、本来の目的は、来訪してくれた人に、いかに満足してもらえるかが最大課題ですし、来訪者の満足とこちらのビジネス目的の両方を実現してこそのWebデザインなのです。
■ UDは必要最低条件
よく、Webデザインというと、ユニバーサルデザイン(UD)を上げるケースがあります。サイトを健常者と同等に使いこなせること、同様に情報を得ることができるよう、色目や文字サイズといった点で様々な配慮をする必要があります。しかし、UDを満足したことだけでは、必要最低条件を満たしたに過ぎません。
UDもそうですが、完成という到達点がないのがWebデザインです。めざすべきところは、使っていて心地よいサイト、また来ても迷わず目的地にたどり着ける安心感、そして、ワクワク感の創出という3つのポイントにあります。
■ おもてなしとワクワク感の醸成
最初のポイントは、やはり、おもてなしの気持ちです。利用するのに、いくつもの説明を確認しなくても直感的に使い方がわかるような構成が必要です。いきなり最初から実現は難しいかもしれません。
これは、ちょっとした手直しや改善の積み重ねで、はじめて実現できるものです。具体的には、問い合わせや利用者の声、アンケート調査の自由回答の中からキーワードを見いだす等の取り組みを継続的に行い、そこから改善ポイントを導き出すという手法があります。
再来訪者(リピーター)を、よりロイヤリティの高いユーザーにするためにも、何度来ても、もちろん初回からでも、サイト全体がわかりやすい構造になっていることが重要になります。
いきなり、目的のページにたどり着ける直達性も重要ですが、それではどうしても視認性という点でチャンスロスになります。多少寄り道をしても、最後には目的地にたどり着けるというのも安心感につながります。
そして、来るたびに、何か新しい発見をしてもらえるような、ワクワク感あふれるサイトをめざす必要があります。いつもと同じ安定感の中に、ちょっとした変化と驚きを演出する。この部分には、たくさんの知恵と発想が不可欠でしょう。

この3つのポイントは、まさしく実店舗でも同じことが云えるものですし、ビジネスモデルの創造においても事業構造と並ぶ顧客満足という重要な柱のひとつにも当たるものです。
デザインという言葉を、既成の概念でとらえずに、例えば、自分たちのビジネスと顧客との関係といったキーワードで、どのように描き出すのかもデザインです。
Webデザインを例として取り上げましたが、あらゆるビジネスの場面でデザインという思考方法は必要になってくると思います。