2005年8月11日木曜日

改革には「後退」も「停滞」も許されない

改革には「後退」も「停滞」も許されない


■ 時代を見失った政・官・報


 いずれの会社や企業においても置かれている状況がわからないままに、狭い社内での抗争や自己保身に走る輩は多いものです。しかし、それであっても、バブル期以降の空白の10年といわれる経済の停滞期とそれに続く長い不況の時代を生き抜いてきた企業においては、常に自分の周囲にある状況を理解し、絶えず挑戦と改革を繰り返しながら、自らにこそ厳しく律していくという企業風土がめばえてきているわけです。


 しかしながら、情勢への理解なく、日夜不毛な抗争と保身に明け暮れている集団が日本にも、それも国家の中枢にしぶとく生き残っていました。


 経済は回復基調にあるとはいえ、日本という国家全体を考えるときに、その財務状態がいかに危機的な状況にあるかは多くの識者からも指摘されているとおりです。しかしながら、高度経済成長期以来、政治家も官僚たちも誰ひとりとして有効な方策を打たずに今日を迎えています。あえて、この間に成果を上げた対策のひとつ、いわゆる土光臨調(1981年3月、当時の財政危機を背景に、土光元経団連会長を会長とする第二次臨時行政調査会が設けられ、我が国の行財政改革と取り組んだ)にしても、政や官ではない民間のカリスマ的な指導者の力を借りたものであったわけです。


■ 構造改革は最終局面にさしかかっている


 以来20年の時を経て、ようやく改革を柱に据えた内閣が誕生し、経済財政構造の改革をテーマに、その具体的な改革ターゲットとして官僚や公務員の依存的な体質を変革するとともに、民間で云うところのリストラ、不要な人的資源を適切に再配置できる体制作りを進めようとして、「民間でできることは民間に任せる」を合い言葉に、肥大化した官僚機構と公務員組織という聖域へメスを入れ始めたわけです。


 一般企業であれば当たり前のことが、明治以来120年間に渡って築きあげられてきた官僚社会、公務員の親方日の丸気質の中では、なかなか実現できてこなかったわけです。しかし、今ようやくその聖域にメスが入り始めた。その最大といってもいい牙城、300兆円もの国民の資産をほとんど活用しないままに死蔵し、世襲制の特定郵便局長や最大の公務員労組である全逓、与野党両面に渡って強力な政治的圧力を有した組織が手を握り、巨大な官僚と公務員の既得権益を維持しようとしている郵政事業に、民営化の流れが起ころうとしています。


 残念ながら、あと一歩のところで、今国会における郵政民営化関連法案の成立はできませんでしたが、改革には抵抗がつきものです。理がかなわないとなると「情に棹さす」発言が多くなって来ていますが、決してあきらめてはいけません。むしろ、いよいよ抵抗勢力が最後の力を振り絞っている、ゲームでいえばラスボス登場の場面かもしれません。


■ 報道だけを信じず自分で判断することが重要


 特に注意が必要なのは、我が国においては報道が極めて恣意的な動き方をするということです。メディアは公平なものという概念は欧米ではすでに過去のものとなりつつあるようですが、日本においてもその傾向は顕著です。全体観をとらえずに対立軸ばかりを強調する傾向は混乱や事件や事故を、むしろ歓迎している営業主義的な体質が見え隠れしています。そして、重大な局面になると、「わからない」「説明不足」というコメントを多用しますが、これは、極めて重大な責任逃れに過ぎません。国民に対して説明責任のある立場の人々の話を正しく、なおかつわかりやすく伝える責任はメディアにあるのです。そのことを忘れて他人にばかり責任転嫁するメディアに正論を語る力量はもはや残っていません。したがって、もはやメディアに期待するのではなく、国民は、与えられるのを待つのではなく、みずから努力して情報を集め、自分の見識と良識にしたがって、正しい判断をする義務があるのです。


■ あなたの会社の構造改革は


 なんだ政治の話か、と思われるかもしれません。しかし、政治もひとつの企業内の出来事も同じ社会活動なのです。もしあなたが、企業の中で、またはあなた自身の会社で改革を進めようとされているのであれば、おそらく同じような抵抗にあったり、批判にさらされたりしているはずです。そうでなければ、あなたは改革を進めていないことになります。そのときに、忘れてはならないことは、改革には抵抗や痛みはつきものだということです。そして、それであっても、改革は停滞させたり、ましてや後退させるということなど、決してあってはならないことだということを銘記していただきたいのです。


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