2006年6月10日土曜日

電算処理からIT化への転換



電算処理からIT化への転換
生協の情報システムが抱える今日的課題 第5回


 かつて情報システムは、電算処理と呼ばれた時代がある。そう古くない話だし、現在も電算という言葉は使われることが多い。いわゆる電子計算機が処理をすることからできた言葉だが、現状もデータを処理することが業務の中心だけにあながち時代遅れの表現とは云えないかもしれない。

 ただ、今日の情報システムあるいはIT部門に求められていることは、情報の処理だけだろうか。もちろん、大量のデータの処理なくしては生協の共同購入のように大量のシステム処理がビジネスモデルの中核をしめる業務は成り立たない。定型化された大量の業務処理を高速かつ正確に処理すること、これは云うまでもなくコンピュータがもっとも得意とする分野だ。しかし、それはEDPという言葉でも定義されるとおり、電子計算機によるデータ処理であり、ITと呼ばれる情報技術、特にその中でも求められている情報活用技術とは違った世界であることを理解しておく必要があるだろう。

 ところで、ここ数年のITの浸透の中でも、企業組織において活用されている分野とそうでない分野とが特徴的に現れてきていることにお気づきだろうか。まず、活用されている部分、それは、マイクロコンピューティング、すなわち、従来のホストコンピュータの処理機能の一部や、フロントエンドと呼ばれる入出力、データ加工と分析をパソコンやサーバコンピュータ上で利用者が自由に扱えるようになったITのひとつの展開形だ。
 おそらく、今日においてパソコンを活用していない生協は皆無ではないか。それは生協に限らず、あらゆる企業においてもそうだろう。パソコンといえども、その能力を集めれば、大型ホストコンピュータのそれを大きく凌駕することは、グリッドコンピューティングの例を見るまでもないことだ。これによって、ホストコンピュータへの一極的な投資が削減され、処理とはいえコンピュータ活用の自由度が高まり、新しい発想や可能性を生み出した効果は侮れないものがある。ただ、それがこれまでのデータ処理機能を分散したという意味だけに、そのことだけを諸手をあげて評価はできない。

 もちろん、パソコンの導入の目的はデータ処理だけでないことは云うまでもない。しかし、一時期のOA化の波が過ぎ去ったあとでは、単にワープロや表計算で資料を作るためだけという名目ではパソコン購入の社内稟議もなかなか承認されなかっただろう。ましてや、後述する情報活用や情報共有という成果や形として表しにくいものではなおさらだ。 そういったときに、たとえば、ホストコンピュータへの入力端末として高価で他に利用価値のない専用端末装置の代わりに安価で勝つよう範囲の広いパソコンを導入するといえば、明らかに決済も得やすい。

 ただ、いずれにしても、パソコンは今や生協の本部だけでなく、共同購入センター、店舗などあらゆる事業所に必ずといっていいほど設置されている。そしておもしろいことに、それらのパソコンが単独で設置されているケースがほとんどないと云うことだ。ここで云う単独でないとは、決して複数台という意味でないことはおわかりだろう。まずほとんどの場合、パソコンはネットワークで接続されている。なぜだろうか。インターネットにアクセスするため?業務でそれほど頻繁にインターネットにアクセスする必要のある部署はそう多くはないだろう。一番考えやすいのは、ホストコンピュータからのデータを受信したり、入力データを逆に送信したりするためだろう。おそらく、そういう理由を付けて導入したケースも多かったのではないか。しかし、このネットワークこそが、パソコンを本来の意味で経営資源とするためのきわめて重要なファクターであることを次回ご説明させていただきたい。

(コープソリューション 2006年6月号掲載)


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