2016年10月1日土曜日

スマホアプリ第2の波の到来[連載第13回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2016年9月1日号掲載

  インターネット業界で、この数年間、常に上位に位置づけられてきたヒットキーワードに「モバイルファースト」があります。
  この言葉は、これまでのパソコンを中心としたWebサイトや画面設計をやめ、もはや利用者数や利用時間でパソコンを凌駕しつつあるスマホを中心に据えた取り組みを推奨するものです。
  ところが、なぜ、このキーワードが何年も上位に留まっているかというと、多くの関係者から指示され、その方向に様々な取り組みがなされているにもかかわらず、いまだに、スマホを中心とした使い勝手のよいサイトというのは、それほど多くはないという実態があるからなのです。
  若い世代を中心に、インターネットの利用や各種の情報収集にはスマホが中心で、もはやパソコンは仕事や学校の授業のためにしか使っていない人たちが増えてきています。
  そういった彼らが、異口同音に訴えるのは、パソコンサイトにはたくさんの情報があるのに、スマホサイトにはそれが反映されていないことが往々にしてあり、もはやパソコンを使わない彼らにしてみれば、インターネット上の情報発信が遅れた、「つまらない」サイトや企業に見えてしまっている、ということです。
  これは企業にとっては、集客や売上の低下、リクルートにおける人材確保にも支障が出る重大な事態なのです。
  ただ、企業やサイト運営者も手をこまねいていたわけではありません。従来からのパソコンサイトも手を抜くわけにはいきませんし、それに加えてスマホサイトを拡張しなくてはいけないわけですので、様々な負荷がかかってしまいます。それに対応するために登場したのが「レスポンシブ」と呼ばれるWebデザインの技法です。
  この技法は、パソコン向けにサイトを作ると、それがスマホにも適した形でサイトが作られることから、サイト管理者の救世主と呼ばれ、一時期ブームとなりました。
  しかし、結果から云うと、この技法もすべてのサイトを席巻するまでには至りませんでした。その理由は、云うまでもなく、モバイルファーストではなく、あくまでPCファーストであったからです。
  パソコン向けに最適化されたサイトデザインを、どのように変換してもスマホで見ると、表現や操作性において最初からスマホ向けにデザインされたサイトには及ぶべくもありません。
  では、スマホサイトを先に設計することで目的は達成できるかというと、なかなかそうはいきません。インターネットのサイトは、基本的にブラウザと呼ばれる標準的な表示プログラムで様々な表示や動作をコントロールしています。標準的であるが故に表現や動作に多くの制約があり、かゆいところに手の届くサイトはなかなか実現できません。
  また、ブラウザにもいくつかの種類があり、すべてのブラウザで同じ表示や動きをさせることは技術的にも難しく、どうしても無難な表現しかできないのです。
  そうしたWeb上での成約から解放される手段として、スマホアプリという手法があります。アプリというのは、インターネットと通信をしながら、実態はスマホ上で作動するプログラムのことです。
  アップル社のiPhone(ios)とグーグル社のアンドロイドという2種類の基本システム(OS)でほぼ寡占化されている現在のスマホ市場であればこそ、この2種類のOSに対応したアプリを作れば、ほとんどの表現や動作を思うとおりにコントロールできるわけです。
  アプリの構築は、スマホ向けのWebサイト構築より投資規模が大きくなることは課題ですが、それでも圧倒的な使い勝手の良さなどから、生協のインターネット事業においても、3年ほど前に第1次のアプリ開発ブームがありました。それまで、Webサイトで対応していたeフレンズなどの共同購入注文サイトをアプリに置き換える動きが始まりました。
  注文番号での注文で、スマホの小さなキーボードではなく、画面いっぱいに表示された大きな電卓型のキーボードから注文番号を入力できる「注文電卓」アプリは、類型を含め、全国ほとんどの生協で提供されている大ヒットアプリです。
  また、Webカタログをアプリ化することで、よりページめくりやページ内での移動を高速化したもの、商品の画像と品名などを分類や用途ごとにタイル状に画面に表示してタッチするだけで注文できるものなど、いくつものアプリが制作され公開されました。
  ただ、この当時のアプリは、Webサイトの注文機能を改善したりアプリならではの操作感を実現するにとどまったものが中心でした。そのため、今ひとつ利用が伸びなかったり、新規の利用者獲得に充分貢献できるまでには至っていませんでした。
  もちろん、組合員の生活の利便性向上に資するようなアプリの開発もいくつか行われていましたが、大きなトレンドにはなっていませんでした。
  そこへ、昨年あたりから新しい潮流が生まれはじめています。
  Webサイトの注文機能の焼き直しでも、単なる生活支援型でもない、新しい形の注文アプリです。
  背景には、この数年、組合員別の利用データの分析が進み、より精度の高い個人別おすすめ(パーソナルレコメンド)が可能になったことや、AI(人工知能)とそれを支えるビッグデータの活用が生協内でも取り組まれはじめたことなどがあります。
  この第2の波は、今年の末から来年の初めにかけて、いくつかの生協で姿を現しはじめるものと思います。
  この新しい潮流に期待したいものです。

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