2016年9月1日木曜日

ポケモンGOがもたらしたもの[連載第12回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2016年8月1日号掲載

  この号がみなさんのお手元に届く一週間ほど前。海外で先行して配信され、やや話題先行となっていたスマホゲーム「ポケモンGO」
が、ようやく日本でも配信され、一気に利用者が殺到して、社会現象にまでなっています。
  実は、わたしも、いちおうは仕事上の知識として必要ということにしていますが、スマホゲームや、ネットゲームに関心の高い、いわゆるオタクの端くれでもあります。
今回のポケモンGOの原型となったナイアンティック社のイングレスというゲームにも親しんでいるので、そのおおよその仕組みも想像できていましたが、イングレスがややマニアックなものであったことから、日本発祥のポケモンという万人受けしやすいキャラクターと結びつくことで、一気に広がりを見せることは当然という思いで今回の騒動をながめていました。
  ポケモンGOの最大の特徴は、なんといっても位置情報を元にし、AR(拡張現実)世界でプレイするというところでしょう。ベースになっている地図は、自分が生活し、活動している現実世界ですが、そこにいつの間にかポケストップやジムという拠点が、それもちょっとしたランドマーク的な場所に忽然と登場し、自分が歩くと、ゲーム上のアバターも、あたかも現実世界を共有するかのように移動していく。そして、その道すがらポケモンが出現する。まさに、GPSの位置情報を最大限に活用したゲームといっていいでしょう。
  こうした位置情報の活用は、以前からのカーナビ、スマホの普及に伴う地図アプリなど、今に始まったことではありませんが、近年ますますその活用の範囲が広がってきています。
  一方で、より精度の高いGPSを求める声も高まり、国産の準天頂GPS衛星も
準備が進められ、数年以内に誤差数センチ以内というサービスが提供される見通しです。さらには、屋外だけでなく、衛星からの電波が受信できない建物内や地下空間での位置情報をGPS電波同様の方式で把握可能な技術も整備されつつあり、もはや、地球上のあらゆる場所で位置情報を活用できる段階へと入ってきています。
  では、生協の事業への位置情報の活用についてはどうでしょうか。BtoBでの物流分野における活用はカーナビと組み合わせた配送ルート最適化などで実績もあります。今回ご紹介したいのは、BtoC、いわゆる組合員との関係の中での活用で、主には店舗での活用がイメージされています。
  まず、パッシブ(受動的)な利用としては、店舗における来店者の把握、および、フロア内での動向の調査というものがあります。
  あらかじめ、スマホにアプリをインストールして、組合員番号などを登録してもらう必要はありますが、そのスマホを持った組合員が来店したことが把握できます。これまでの来店客数は正確にはレジ通過客数です。本当の意味での来店状況、滞店時間などが把握できます。
  店舗入り口にセンサーなどの設備を設置することに比べると、スマホの位置情報を活用することの方がローコストになり、アプリインストール者へのポイント提供などによる収集するデータの拡大の原資も捻出できます。
  また、長年の懸案であった来店客の店舗内での行動調査、いわゆる客動線調査もきわめて容易になりますし、通過や他名前での停止なども把握できます。
  スマホとアプリという限られた対象者で実施する以外にも、GPSではありませんが、買い物カートに位置測定装置を取り付け、同様に客動線を把握、POS通過と合わせて、購買までの分析をする仕組みなどは、すでに東芝テックなどがサービス提供を開始しています。
  そして、アクティブ(能動的)な活用方法としては、まさしく、ポケモンGOにも関連してくるかもしれませんが、特定商品の棚前を通過すると、スマホが振動して画面上にその商品のクーポンが表示されたり、あらかじめ、買い物をするリストをスマホに登録しておけば、来店と同時に、そのリストにある商品を最短で手にできるルートを、スマホ画面上の店内レイアウトに表示したりすることなどは、想定の範囲内といっていいでしょう。
  もとより、最短であるはずのルート上に、なぜか店側がおすすめしたい商品の陳列の前を必ず通過する設定になっていたとしても、不思議ではありません。
  アイデアレベルでは、以前から語られてきた仕組みやツールではあります。しかし、実際に組合員に理解し、利用してもらえるような形にするという段階になると、まだまだ、実現には高い壁がありました。
  とりつきにくいといわれてきた位置情報をはじめとする最新技術と店舗利用者とのインターフェイスをより身近なものとしてくれつつあるのは、ポケモンGOのようなムーブメントのおかげなのかもしれません。

0 件のコメント:

コメントを投稿