コープソリューション2017年11月1日号掲載
登場してから数年になりますが、なかなか実態や対応がつかめないオムニチャネル。アマゾンや、国内でも成功事例がいくつか喧伝されはじめています。店舗だけでなく、宅配(共同購入・個配)という一般にはない業態を持つ生協では、どのような理解と対応が必要なのでしょうか。■ 組合員という「顧客」を識別できているか
元々は、ひとりの顧客を識別しつつ、自社の持つ様々な購買チャネルへ誘導し、よりよい体験を提供することで、自社へのロイヤリティを高めるのがオムニチャネル戦略といわれてきました。
生協も、流通他社やEC専業他社と同様、様々なチャネル、すなわち、組合員との接点を持っています。もちろん、組合員は、IDでしっかりと識別された顧客です。
店舗、宅配、サービスといったそれぞれの事業チャネルにおいて、どの組合員が何を利用したかという実績は、掌の上にあるはずですが、それはあくまで結果であって、意図してそのチャネルの利用へ誘導しているかというと、はなはだ心許ないところです。
オムニチャネルのあり方を、組合員目線で考えてみるとよくわかります。
宅配は、生活必需品が自宅まで届く大変便利なチャネルです。若干手数料はかかりますが、個配であれば、受け取りに在宅する必要もなく、注文もECを使えばほぼ24時間いつでも受け付けてくれます。
ただし、配達曜日が決まっていて、注文からのお届けまでが1週間近いという制約があります。
宅配の最大のネックである、非即時性という点では、ネットスーパーのサービスが展開されていれば、ある程度解消されますが、現実には、まだまだ広がっていません。
もちろん、生協でも、店舗というチャネルは確保されていますが、宅配との連動などはそれほど確立されていないのかもしれません。
■ ポイントの共通化は必須
例えば、プロモーションの基本ともいうべきポイントについて、宅配と店舗で共用できている生協は少ないようです。これは、ポイント付与のレートの違いや、そもそも、プロモーションが独立していることも関係しています。
確かに、国内の流通各社でも、店舗とECのオムニチャネル化で成功している事例はそれほど多くありません。
しかし、EC専業から実店舗を出店して、オムニチャネル戦略で成功している例は、アマゾンなどが有名でしょう。
また、ヨドバシカメラのように、実店舗からECへ乗り出して、オムニチャネルの成功例といわれているものもありますが、いずれも、ポイントなどのプロモーションは、どのチャネルにおいても共通となっています。
利用者の目線に立てば、ポイントの共通化というのは必須です。
システムの違いは、いきなり完全共通化できなくとも、当面、手作業対応も含めた交換方式で対応する案もあります。
■ スマホを手にする時が購買タイミング
さらにオムニチャネルの核心は、購買のタイミングへの関わりにあります。
これからの購買タイミングは、「思い立ったそのとき」です。
何かが欲しいと思ったとき、どういった行動を取るかです。
これまでであれば、急ぐなら近くのスーパーかコンビニへ、生協組合員で、時間に余裕があれば宅配で、でしょうか。
これからの消費者の多くは、まず、スマホを手にすると考えていいのではないでしょうか。そして、自分がいちばん使いやすいチャネル、例えばアマゾンを選んで注文する、あるいは、ネットスーパーを利用するとなりますが、前者は生鮮品への対応はこれからですし、後者は、配送料と受け取りのタイミングなどまだまだ制約があります。
生協組合員の場合、欲しいと思った商品が、近くの生協の店舗にあることがわかり、宅配で来週届く代わりにもっと安い価格になっているということがわかれば、どちらを選択するかは、組合員自身の判断になるでしょう。
これに、宅配便配送のネットショップなどの購買チャネルなどが加われば、利便性からも、生協への集客はさらに高まるものと思われます。
つまり、スマホを入り口とした、店舗と宅配、その他のチャネルを横断的に利用できる仕組みこそが、オムニチャネルであり、その利便性をアピールし、入り口であるスマホやアプリへの誘導を図ることがマーケティングやプロモーションの役割となってきます。
オムニチャネルの入り口戦略として、アマゾンや他社との差別化を図れる要素である、コープ商品や生協というブランドロイヤリティを最大限生かすことはもちろんですが、サービスや仕組みの面でも、遅れを取らないような対応が求められています。