2018年9月1日土曜日

まだ手づくりしますか? 生協のECサイト[連載第36回]


 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2018年8月1日号掲載

WebサイトやECサイトであっても、コンピュータプログラムとは無縁ではありませんでした。そこに登場したのが、SaaS(サース、Software as a Service)、プログラムやシステムの必要な機能を必要な分だけインターネット経由で利用するという概念ですが、今ひとつよくわかりませんね。この概念を、ECサイトで具体的に実現するために、もう一つのキーワードが登場します。


 いきなりの3文字英略語で恐縮ですがAPIというのをご存じでしょうか。アプリケーションプログラムインターフェイスといって、コンピュータプログラム間の連携を行う方式とでもいいましょうか。
 プログラムやシステムの話か、とお思いかもしれませんが、少しだけお読みください。

■ 他力本願の外部連携サイト

 インターネット事業がテーマの連載ですので、今回の話ももちろん、インターネットのECサイトに当てはめてお話ししましょう。
 日生協のCWS共同基盤にせよ独自基盤にせよ、これまでのECサイトは、まず、サイトを稼働させるサーバを確保し、そこで稼働するプログラムを開発し、デザインやバナーを用意し、ホストコンピュータと連携するインターフェイスを準備することでサイトをオープンさせることができました。
 ところが、「くらしと生協」や「スクロール」サイトのように、生協のECサイトから先方のサイトに遷移してそのまま注文ができるところも現れてきました。
 こういったサイトを外部連携サイトといって、組合員である識別情報だけを持って遷移することで、もう一度ログインし直す手間を省くことや、相手側のサイトで注文した情報を持って、生協サイトへ戻ってきて、あたかも、生協サイトで注文したかのように見せるなど、生協サイトではないところでも、同じ生協サイトのように見せる、ショッピングセンターのテナントのような構成を作ることができてきました。

■ 見えないところで活躍するAPI

 このように、利用者が気づかないうちにサイト間を渡って、同じように利用できる状況を作るために裏側で連携しているのがAPIです。
 スマホの注文アプリとECサイト間もAPIで連携してデータをやりとりしていますし、Webカタログのように、特定の注文機能を独立したサイトとして構築して、いろいろな生協のECサイトから利用する方式でもAPIが間を取り持っています。
 これまで一から十まで、すべての機能を自身のECサイトに持たなくてはいけなかったものが、APIによって、様々な機能を提供できるようになってきたのです。

■ ECサイトがカセットポンで作れる?

 こうして考えると、すでに、ECサイトを設置するサーバは、クラウドという環境を借りて運用するのが当たり前になりつつあります。注文機能も、アプリやWebカタログのように共同利用できる機能が登場してきています。それぞれの生協は利用者が組合員であることを確認(ログイン)して、それ以降の注文機能は、どこか違うところが開発した機能やサイトとAPI連携することで利用することで、ほとんど自身でシステム開発をすることなく、カセットポン式にECサイトを構築することが可能な時代に入ってきているということです。
 安定稼働のための手間や、新しい機能を開発する労力などをアウトソーシングすることで、より便利な機能を素早く組合員に提供できるAPI連携を検討すべきでしょう。

■ ほんとうはもっとスゴイAPI

 最後に、APIには、こうしたモジュール型の連携を図る機能以外に、システムを構成する様々な部品じたいをインターネット経由で利用する方式もあります。こちらの方がむしろ本来なのかもしれません。
 システム開発者はプログラムを開発するのではなく、APIモジュールを組み合わせて機能を作り上げます。個々のAPIは、インターネット上のどこにあるのかはわかりません。登録をして必要な利用料金を支払えば利用できます。スマホのアプリストアのように、APIのストアもインターネット上には多数存在しています。
 斬新な機能を持っていたり、多くのサイトで利用されている安定したAPIを利用することで、自分の思うままのサイトが開発コストを抑えながら、短期間で構築できる。長年システム部門が夢見ていたような世界が、Webの世界では、すでに訪れているのかもしれません。