2018年10月1日月曜日

ターゲットは「団塊ジュニア」 -意外にネット適性がある熟年世代-[連載第37回]


 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2018年9月1日号掲載

20歳から35歳までの女性をF1層と呼んで、マーケティングやプロモーションの世界では最も重要視する消費者層としています。しかし、若年層に人口構成比が低下するこれからの時代、生協が注目すべきはもっと上の世代ではないでしょうか。しかも、その世代が予想外にネットリテラシーが高いとすれば、少し違った未来が描けるかもしれません。


 調査によれば、ネット通販の利用デバイスは、20代をのぞいて全年代でパソコンがトップだそうです。通常のネットとの接触では、過半数がスマホであるのに対して、意外な感もあります。
 理由のひとつとしては、商品の詳しい情報や精密な写真となると、画面の大きなパソコンに一日の長があるからかもしれません。ただ、スマホ本来の能力を引き出せるようなサイトの作りや使い勝手に、まだ多くのECサイトがたどり着けていないことも一因なのでしょう。

■ 利用者数に比例しない購入金額

多 くの生協のネット注文でも、スマホによる注文が半数に届こうとしています。その一方で、スマホ利用者の購入金額はこれまでの平均購入金額をかなり下回る結果になっているようです。
 これは、ネットに限らず、生協の利用年代層と購入金額との関係を見るとわかることです。いわゆる子育て若年世帯と熟年世帯とでは可処分所得に差があることなどから、50歳代がもっとも生協を利用している年代層になっています。必然的にスマホ利用の中心年代よりも平均購入金額は高いという結果になるわけです。
 しかも、利用の中心である50歳を中心とした年代がどういう年代かを考えると、面白いことが見えてきます。

■ 携帯とネットの登場

 日本で携帯電話やインターネットが普及し始めたのは、1995年、いわゆるウィンドウズ95の登場などがあって、ネットが市民権を得てきた時代で、その当時、社会に出たばかりの世代がちょうど今、40歳後半から50歳にさしかかっているのです。社会人としての当初から、携帯電話やパソコン、インターネットに慣れ親しんだひとたちです。
 パソコンが中心ですが、EC利用も活発な年代で、都市型で若年層に傾斜した年代構成の生協をのぞいて、ネット注文の中核となっているのもこの年代なのです。
 ところが、EC業界、もちろん生協においても、ネット利用はF1という信仰があって35歳くらいまでの女性がターゲットとされてきました。

■ 団塊ジュニアという世代
日本の人口ピラミッド、42歳付近のピークが団塊ジュニア


 確かに、F1層は、将来を見据えても生協を支えていく年代なのかもしれません。しかし、親たちが既に購買の世界から引退しつつある我が国では、40歳~50歳のいわゆる団塊ジュニアが、圧倒的な人口構成比となっています。
 今後さらに高齢化が進むとすれば、この世代が2030年台半ばくらいまでの、向こう十数年間の購買を支える世代といえるのではないかと考えられています。
 しかも、そこそこネットリテラシーもあるとなれば、ここに向けたネット戦略を立てるのが最も有効です。
 では、これまでのスマホ中心戦略を見直すのかというと、その必要はありません。
 団塊ジュニアの特徴は世間の流行にも敏感であることで、スマホにも適応してきています。ただ、今後の身体的衰えなどを見据えると、タブレットなどへの乗換も想定しておく必要があるでしょう。
 このあたりは、先行してのアプローチとして、東西でタブレットを中高年向けに展開している生協が、いずれも3千人を越える利用者確保している事例などを試金石として評価すべきでしょう。

■ 非同質性アプローチで長期戦略を

 同質性を重んじた親の世代とは異なり、個性を重視するこの世代に対しては、単一の紙カタログよりも個人別対応やバラエティーを演出しやすいネット・ECのほうがアプローチしやすいことはいうまでもありません。その一方で、これまでそういった特別な扱いを受けてこなかった世代だけに、EC独特の施策に興味を持って受け入れてくれる可能性も高いはずです。
 いずれにしても、団塊ジュニアが現状の購入の中心世代を経て、やがて高齢者という年代へと移り変わるのには20年近い年月が存在します。
 今こそ生協は、この年代をターゲットにした、長期的なネット戦略、事業戦略を立てるべきだと考えます。