2019年4月1日月曜日

生協はスマートホームのハブとなれるか?[連載第43回]

 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2019年3月1日号掲載

 スマートスピーカーのCMの中では、呼びかけるだけで暮らしの中の様々な困りごとを解決してくれる夢のような世界が展開されています。この世界は、もうすぐそこにまでやってきています。ただ、そういったサービスは、誰かが提供してくれないと現実にはならないものなのです。

■ 中核機能はクラウド上に

 3月といえば、年度替わり、卒業、入学と様々な面で節目となる季節です。
 この春は、世間を賑わす賃貸住宅会社の不祥事や景気回復に伴う人手不足もあり、引っ越し業者の確保がままならないことから、人事異動の時期を変更せざるを得ないという企業もあるようです。
 ともあれ、新居への引っ越しや新生活ともなると、一度は夢みたいものがスマートホームではないでしょうか。
 牽引役のひとつであるアマゾンがスマートスピーカーのアレクサを使って、スマートホームのイメージ拡散を図っていることから、徐々にですが関心が高まりつつあるようです。
 もっとも、このスマートスピーカーが持っている機能はそれほど多いわけではなく、インターネットとの接続を基盤として、スピーカーとマイクを入出力としているのみで、それ自体は特に処理機能を持っているわけではありません。
 人間との応答や処理を行っているのはクラウド上にあるアレクサというプログラムだからです。

■ 機器を結びつける「ハブ」

 スマートホームの主要な機能は、人間との対話をベースとして、様々な家電製品のコントロールとネットとのやりとりです。残念ながら、スマートスピーカーには、一部を除いて家電コントロール機能はありません。
 あれはあくまでスマートホームの実現イメージなのです。
 実際にスマートホームを実現するためには、さらにいろいろな機器とそれをコントロールするアレクサのようなプログラムを結びつける機能が必要になります。それをハブと呼びます。
 昨年の時点では、スマートホームのハブとなる製品は数えるほどでしたし、ハブと接続できる家電製品なども多くはありませんでした。
 今年に入って、家電見本市のCES等で相次いで製品の発表があり、一気にスマートホーム市場が花開いた感があります。
 家電情報機器大手のソニーが発表したスマートハブは、AIホームゲートウェイという製品で、ネットとの通信や、家庭内の各種機器をネットやセンサーと繋げることができます。なによりも、アマゾンアレクサの機能を持っていて、簡単にスマートホーム機能が実現できます。
 こうして、スマートホームが少しずつ活用できる環境が整ってきたとき、次に考えて行かなくてはならないのが、その活用の中身です。

■ サービスとしてのスマートホーム

 パソコンがワープロや計算の道具から一気に変貌を遂げたのがインターネットでした。インターネットの世界にある無限のコンテンツと出会ったことで、わたしたちの暮らしになくてはならない道具となったのです。
 スマートホームも最初は、家電製品をコントロールしたり、パソコンやスマホを操作しなくても様々な情報を提供してくれる便利な道具として認知されるでしょう。
 しかし、それだけでは単なる道具の範疇を越えるものではありません。
 やはり、わたしたちの暮らしに関わる様々な手間や不便を解消したり肩代わりしてくれたりする存在でなくては本当の意味はないと思います。
 暮らしの中で、大きな負担でもある買物も、ネットで注文できるようになりましたが、注文を決めるのは人間です。その人間に代わって在庫や嗜好を意識した注文ができるようになることが求められてきます。
 いまはできることでも、将来、高齢化したときに同じことができない人たちも増えてきます。
 スマートホームという機能やシステムではなく、そうした暮らしの中の困りごとまで含めて、便利に解決する、それがサービスとしてのスマートホームの究極の姿であるように思えます。
 そのハブとなりうるのは、アマゾンのような情報デンバーでしょうか、ソニーのような家電メーカーでしょうか、それとも生協なのでしょうか。