2020年4月1日水曜日

Ready to DX?[連載第55回]


 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2020年3月1日号掲載

  中国が端緒となった新型コロナウィルスの感染の広がりは、感染そのものよりも検疫や隔離、ひととの接触の防止といった予防策によって世界全体の経済活動へのマイナスの影響という余波のほうがより重篤なダメージとなってきています。昨年秋の消費税率引き上げによる景気への影響が懸念される中で起きた今回のウィルス禍によって、リーマンショック以上とも予測される不況期が迫ってきているとすれば、それを乗り越える手立てはあるのでしょうか。



■ ピンチをチャンスととらえる
 すべてのビジネス分野に適用できるわけではありませんが、感染予防対策としてテレワークやWeb会議が注目を集めています。
 接客や現業系では適用できない対策ですし、移動そのものが削減されることは経済活動全体ではプラス面だけではないという意見もあります。
しかし、これまでの働き改革というかけ声だけでは進まなかったデジタルシフトが、ある種の「外圧」によって浸透するという面は評価できると思います。
 ただ、テレワークひとつをとっても、昨日今日、決意してもすぐにスタートできるものではなく、あらかじめの準備が必要なのはいうまでもありません。
 経産省が提唱する「2025年の崖」は、人材面でのリソースの払底対策が中心でしたが、それ以外のあらゆる面においても、DX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが必要なことが、今、この状況の中で気づくことも多いと思います。
 日本生協連が提唱する「2030年ビジョン」においても、社会情勢としては人口の減少やそれに伴う産業構造の変化、右肩下がり消費動向など、必ずしもバラ色の未来は描かれてはいません。
 シュリンクしていく社会構造の中にあっても、生協が組合員の暮らしを支えていくためにはより高度に効率化された事業構造への移行は、もはや待ったなしの状況です。今回の新型コロナの問題が、それをあと押しする出来事であったとすれば、ピンチをチャンスととらえる考え方でDXを進めていくべきかと思います。

■ アフターデジタルをイメージする

 先日、ある意味DXは、そのものが目的化していないか、という指摘がありました。たしかに、DXは、あくまで手段であり方法論です。めざすところは別にあるわけです。例えば、今回の感染対策もめざすところのひとつではありますし、働き方改革もそうです。こうした目的や到達点をさして、10月号で「アフターデジタル」という概念をご紹介しました。
 DXによって、どういった社会や生活環境を実現するのか。その中で自分たちのビジネスがどのようにあるべきなのかをイメージすることこそが、「アフターデジタル」になるわけです。
 そういった意味で、みなさんは生協の事業、さらには、組合員の暮らしにおけるアフターデジタルをイメージできているでしょうか。

■ 情報共有とDXに向けた準備を

 とはいえ、イメージするといっても、具体的に何ができるのか、あるいは、できそうかということを理解していなければ、結局は現在の延長線上にしか未来は描けません。
 できないというネガティブな情報ではなく、こんなことができる、あるいは、できそうだという前向きな情報が重要です。
 例えば、今年から実用化される5Gという通信方式とAR・MRなどの拡張現実を活用することで、自宅にいながら、まるで店内を回遊し、特売コーナーを探したり、野菜や肉のパックを手に取り、品質や鮮度を確認して買うことができたり、あと一歩で手ざわりも感じられたりするところまで来ていることを情報共有し、もっとこんなこともできるのではと、さらなるイメージを膨らませていくことも可能でしょう。
 そうして描き出されたアフターデジタルをどのように実現していくのか、それがDXであり道筋になります。2025年を待っていても、DXも未来もやっては来ないのです。
 まずは未来をイメージし、そこへの道筋をDXという手法で描くところからはじめるべきでしょう。
 アフターデジタルのイメージ作りは、職員、組合員をはじめ多くの人たちの協力も必要になります。
 それは、まさに生協だからできるイメージ作りになりますが、やみくもに進められるものではありません。アフターデジタルやDXについての、しっかりとした構想と体制を準備して進めるべきと考えます。

Are You Ready to DX?