2005年7月27日水曜日

ビジネスでメールを利用する際のマナー

ビジネスでメールを利用する際のマナー


[抄録]
 メールは素早く確実に相手に要件を伝えることができる一方で、相手の顔が見えないというデメリットをカバーするために状況を考えながら使い分けることが必要となる。また、同じ内容を相手だけでなく複数人の関係者に一斉送信できるCC機能は、ビジネスのスピードをあげる上で大変役に立つだろう。



 メールは忙しいビジネス社会において相手の仕事の手を止めずに連絡をすることができ、相手の状況に配慮した通信手段です。耳で聞く電話と違って用件が確実に伝わりますし、何度でも読み返すことも可能です。
 こうした点で便利なメールですが、一方では直接会って反応を見ながらの会話や質問に即答できないといったデメリットもあります。また、商談を左右するような局面やミスをしたお詫びなどについては、一般的には直接足を運ぶほうが好印象を与え評価も高くなると言われますので、何でもメールで片づけてしまうという姿勢は避けた方がいいでしょう。


■ ビジネスメールの独自マナー


 ビジネスメールといっても特別なものではありませんが、仲の良い友人との気軽なメールとは違い、独自のルールやマナーがあります。
 まず、ビジネスメールの場合、タイトルは内容を要領よく表現したものである必要があります。「ご連絡」とか「ご訪問の件」などのように抽象的では数多く届くメールの中で埋もれてしまいますし、中身を見るまで内容が想像できないなど、忙しい相手には敬遠されてしまう場合もあります。「明日の面談30分繰り下げのお願い」「昨日のセミナー資料添付します」といった具体的で端的な書き方をマスターしましょう。
 もちろん、「(^^;) 」といった顔文字や「(汗)」などのムード表現は厳禁ですし、文章は敬語、謙譲語を使い分けてあいまいな表現や言葉使いは避けましょう。語尾も「です。」「ます。」に統一するといいでしょう。
 添付ファイルも要注意です。ブロードバンド時代ですから多少大きな容量のファイルもそれほど時間がかからず届けることはできますが、それでもネットワークに負担がかかりますので圧縮ツールで容量を減らして添付するなどの配慮が必要です。もちろん添付する前にウイルスチェックを行うことは最低限のルールです。ウイルス感染したファイルを送付することは、社会的な制裁すら覚悟しなくてはならないほど重大なミスなのです。


■ CCの便利な活用法


 メール独特の機能を上手に活用する例としてCC(カーボンコピー)の活用があります。メールの宛先の次にはCCという別の宛先欄が表示されているはずです。これは同じメールをこの宛先にも送るという機能です。同報するだけなら宛先欄に並べて書けばいいのですが、あえてコピーとして送るのは、宛先はメールを送る目的の相手、CCには社内の関係者や自分の上司を入れて、客先とこういう商談をしていますよという報告やアピールを兼ねるとともに、客先に対しては、「このメールは私だけでなく、上司も了解している内容なのですよ」という安心感を与える役目も果たしてくれます。
 このように、ルールとマナーを理解してメールを活用していけば、低コストでスピーディな通信・広報手段として皆さんのビジネスをプラス方向に導いてくれることでしょう。


(株)リックテレコム社刊「COMPASS(コンパス)2005年夏号」掲載


2005年7月24日日曜日

第1回 1台の電話機からCTIは始まる

第1回 1台の電話機からCTIは始まる


[抄録]
インターネットショップが花盛りだが通販・カタログショッピングの受注媒体としては電話が主流。単に受注手段としてだけではなく、セールスとしても強力な武器になる。大がかりなコールセンターシステムがイメージされるが、スタート時点では数台の電話と手作りシステムでスモールスタートして、顧客とノウハウの獲得を始めることも一案。



■ 拡大するネットショッピングもシェア3%


 先頃、日本におけるインターネット広告の市場が、昨年ラジオ広告を抜き、2007年には雑誌広告を越え、2009年には現在の3倍にも拡大し、テレビ、新聞に次ぐ広告規模になるという予測が発表されました。もちろん、広告だけでなくショッピングサイトの売り上げも、2004年度で7兆円という規模に達し、さらに成長し続けています。
Ecmarket  しかし、消費者向け商業全体でのシェアでいうと3%程度で、まだまだすべてを席巻するまでには至っていません。マスメディアが喧伝することと実際との乖離があることの表れであり、あまり焦ったりあわてたりすることなく、それでいて今後の成長ぶりも注視しておくというのが正しい対応ではないかと思います。
 では、ネットショッピングが急成長する背景になにがあるのでしょうか。この点については、いろいろなところで論じられていますので詳論は、ここでは触れませんが、特徴的なものにだけ触れておきます。それは、いわゆる「非対面性」ではないかといわれているのです。「非対面性」とは、直接向き合って話し合うことなく、パソコンの画面に入力するだけで買い物ができる点を利点としてとらえた場合の表現なのです。


■ 非対面性を逆手にとるビジネスモデル


 ネットショッピングが「非対面性」を生かしたモデルだとすれば、それはネットショッピングの弱点でもあることになります。つまり、人間との対面性がない、言いかえれば、買い手側の希望や要望に応じたコンサルティングや商品選択をサポートしてくれるような買い方にはネットショッピングは対応できないというわけです。
 もっとも、ITの世界のことですから、すでにネット上でさまざまなコンサルティングや人間的な対話を実現するようなシステムも開発された途上であったりしますので、いずれは、そういったデメリットも払拭されるようにはなると思います。しかし、当面は対面型のショッピングシステム、いわゆる従来からのリアル販売のほうが、コンサルティング型の商品・サービス販売においては、一日の長があることになります。


■ ネットとリアルの間隙をぬって


 とはいいながらも、ネットショッピングの持つ特徴点は、これからの販売ビジネスにおいて無視できないメリットがあります。
 24時間いつでも受け付けてくれる。遠くまで出かけなくても注文できる。というネットならではの特徴点と、在庫や納期がすぐにわかる、といったリアル店舗の強みも持っているからです。
 では、こうした強みを生かしながら、残り97%のシェアのなかで成果を上げることができる販売方法としてどういったものがあるかというと、おそらくは多くのみなさんが、もはや当たり前と感じるであろう電話という手段なのです。当たり前のことではありますが、現時点においては電話こそがリアル店舗の特徴とネットショッピングの利便性をどちらも完全にとはいいませんが、その多くの部分を満足させ、なおかつ、多くの消費者にとってネットショッピングの経験者が1割程度しかいない現状の中で、ほとんどすべての消費者が電話による商品購入や注文を経験しているという事実は、これからも、しばらくの間は電話という通信手段が商品販売において強力な武器になることを意味しているといえるのではないでしょうか。


■ 電話受注からCTI、CRMへ


 電話で注文を受ける、というのは今に始まったことではなく、おそらく電話が登場して以来のビジネスモデルであり、いまさら云うことなどないのかもしれません。しかし、現在では来店して注文を受ける、ご用聞きに回って注文を集める、その代わりの電話、という存在ではなく、さまざまな顧客情報と連動させてビジネスチャンスを拡大するCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレート:Computer telephony Intergrate)や顧客との長期的な関係性を維持するための取り組みCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:Customer Relationship Management)などへと進化を遂げているのです。
 素晴らしい技術や製品を持ちながら、販売力を持たないために、事業の拡大が望めない、あるいは他社の下請けに甘んじるしかないという企業はかなりの数に上ると云われています。とは云いながら、新たな販売ルートの開拓や営業活動にさける人的パワーにも限界があります。より効率的な販売ルート確保のためにインターネットに乗り出すのも方法ですが、商品特性によっては、まだまだインターネットでの市場形成が難しいものもあります。
 ネットワークの部分を電話に置きかえて、コンピュータの力を活用した電話による販売網作りや営業活動をすすめていくことも、ここ当面の間の事業戦略としては有効ではないでしょうか。当然、そこで培われたノウハウや顧客は、次のステップでネットショッピングを展開する場合でも有効に引き継いでいくこともできるはずです。



■ どうすればCTIは導入できるのか


 それでは、つぎにどうすればCTIを営業活動に向けて導入できるのかということをお話ししましょう。
 CTIというと、どうしてもテレビなどで宣伝されているコールセンターのように、いくつものブースとたくさんの若い女性テレホンオペレータが座っている姿を想像されるかもしれません。しかも、各ブースには電話機ではなくヘッドセットとパソコンが並んでいて、オペレータたちは、次々とかかっている電話に対応しながら、パソコンの画面で情報を参照したり入力したりしている様子を思い浮かべるかもしれません。
 そういった大規模CTIシステムや大規模コールセンターももちろんありますし、こうしたコールセンターシステムはどうしても規模のメリットが出やすい仕組みでもあります。
 しかし、本来のCTIというのは、そういった大規模なものを意味するのではなく、それもひとつの発展形ですが、ひとりの顧客、1台のの電話機、ひとりのオペレータ、1台のパソコン、これらを有機的につなぎ合わせて、最大の顧客満足を得るための仕組みなのです。
(第2回に続く)


2005年7月21日木曜日

ナレッジマネジメントの世界

ナレッジマネジメントの世界


■ ナレッジマネジメントを探訪する


 最近話題のソリューションのひとつであるナレッジマネジメントとはどういうものなのかを理解したいと思い、いくつかのセミナーと展示会に参加してきました。
 セミナーに先立って展示会を見学しましたが、驚くほどの人が会場を埋めていまして関心の高さを示していました。
 それぞれのブースで説明を聞く前に、まず、こういう質問を説明者に投げかけてみました。
 「御社が提案しようとしているナレッジマネジメントとは、ソフトウエアやツールなんですか?それともサービスなんですか?概念や考え方なんですか?」
 これに対して、ほとんどの説明者はちょっととまどった様子でしたが、ソフトウエアもしくはツールであると回答してくれました。もっとも、すんなりとそういってくれたわけではなく、例によってトータルソリューションとして云々、という説明からはじまったのですが、消去法的にサービスでも概念でもないという話になり、最終的にはソフトウエアというところに落ち着いたケースが多かったのです。
 「では、どういう種類のソフトウエアなんですか?」という問いかけには、グループウエアのようでグループウエアでもなく、全文検索ツールとしての機能も内包している、インターネットの検索エンジンをイントラネット向けに特化したり、データマイニング的なオプションを持っていたり、と様々でしたが、どうやら多くの場合、検索機能が中核となっているように思えました。
 どうもブース巡りでは全体像がつかめません。そこでいよいよセミナーに参加してみましたが、今回はあまりナレッジマネジメントツールを前面に押し出していない、ややマイナーなテーマを選んで話を聞いてみることにしました。というよりも、名の通ったツールを掲げたセミナーは早くに満席になってしまい、わたしが受けられたのが上記のようなセミナーだったというのが本当のところです。ただ、結果的にそれが非常によかったのですが。


■ ナレッジマネジメントをひもとく


 少しメモランダムになりますが、キーになる発言を拾ってみました。


  • ナレッジマネジメントは、現代ビジネス社会の中で、ごく当たり前のビジネス管理手法。だから、その目的はROIの最大化にある。ある研究機関の試算では、導入前後で8倍もの開きがあるということ。


  • ナレッジマネジメントのビジョン(めざすところ)は、知的情報により業務改革を支援するということ。


  • ITだけではナレッジマネジメントを組織に浸透することはできないけれど、ソフトウエアやツールなしでもできない。


  • ナレッジマネジメントは企業情報を全方位にわたってカバーできるもの。企業ポータルもまたアプリケーションと企業コンテンツを全方位にわたって結びつける。


  • ナレッジマネジメントの導入に当たっては、コントロールと実証性、アクセスの容易さや様々な利用方法、共有性や独創性、複合、組み合わせということを理解しておかなくてはならない。


  • ナレッジマネジメントによってもたらされるものは、生産性の向上、ビジネス機能の一貫性の確保、トータルコスト削減などがある。また、階層化された組織体制をよりフラットなものに変革することを求められるようになる。 


 以上のように内容そのものは、ナレッジマネジメントについてというより、ナレッジマネジメントが業務改革のツールの一つであるという観点からその重要性や必要性について少し理解できたように思えます。


■ フロー型情報まで取り込むデータベース


 たしかに、これまでも企業内の情報蓄積はあったはずです。しかしそれはベストプラクティス型といって成功事例や完成されたマニュアル、あるいはトラブル報告にみられるような最終結果情報の蓄積であって、そこから新たな知的創造をもたらす協創型ではなかったわけです。本来、企業内で流通している情報には、DB化された情報、文書情報やマニュアルなどのストック情報、メールや社内掲示板などのフロー情報があるわけです。いわゆるストック情報は、これまでもナレッジマネジメントの対象領域とされてきたわけですが、本当の協創型ナレッジマネジメントをめざすのであれば、後者のフロー情報に着目すべきであることはいうまでもありません。


 フロー情報の最たるものがメールやメーリングリストですが、これらは非定形情報であり、こういったものを活用しようとすると、現時点では、まだまだメール内情報の体系的整理の手段がないことや、添付ファイルをどのように取り扱うかといった技術的検討が不可欠となってくるわけです。


 本来的にはメールではなくテーマ別に区分された掲示板などコミュニティでの情報共有や協創をはかるべきなのかもしれませんが、掲示板が受動的情報発信(見に来てくれないと情報を提供できない)であるのに対し、メールやMメーリングリストはプッシュ型の情報発信ですから、否応なく情報が送りつけられるメリットはあります。従って、このふたつをうまく融合化させることで、より効果的なフロー情報の収集と整理分析そして活用が可能になってくるのはあきらかです。


■ ブログもナレッジマネジメントツールになる


 ひとつのキーワードとして、最近、パーソナルユースとして人気を博しているMovable TypeやXoopsなどのいわゆるBlogツールをビジネス用途に導入して、イントラネット上でのコミュニケーションツール兼ナレッジ集積用ツールとして活用し始めている企業が増えているといいます。


 しかし、そういったナレッジマネジメント導入のためには、大規模なシステムは必ずしも必要ではないことは事実のようです。まずは企業内におけるストック情報、フロー情報を、いずれにしても電子化していくことは最低限度必要な取り組みです。そのためにはメールシステムや掲示板システム、それらを統合したグループウエア、そしてBlogシステムなどの導入と活用をはかっていく必要があります。


 その上で、蓄積された情報の分類や整理を行うわけですが、最初は手間暇をかけずに全文検索のソフトなどを使うのも方法でしょう。あとは使っていきながらより便利なツールなりサポートシステム、それこそがナレッジマネジメントシステムですが、そういったものを導入していけばいいのではないでしょうか。


 以上のように、ナレッジマネジメントというのは、企業や組織における情報蓄積と分類活用を網羅的かつ効率的に行うためのサポートシステムであり、企業内の知恵やノウハウといったものがようやく電子情報として蓄積され始めた現在において、これまで人間とともに、あるいは時間とともに失われていった数多くの英知を蓄積し再利用し、新たなる知恵の創造をはかることで、企業活動をきわめて効果的に向上させうる手段であり、これからの企業における大きな知的財産となりうるものだといえるようです。


(株)コープKサットWeb、BusinessNow!に掲載されたものに加筆