ナレッジマネジメントの世界 |
■ ナレッジマネジメントを探訪する
最近話題のソリューションのひとつであるナレッジマネジメントとはどういうものなのかを理解したいと思い、いくつかのセミナーと展示会に参加してきました。
セミナーに先立って展示会を見学しましたが、驚くほどの人が会場を埋めていまして関心の高さを示していました。
それぞれのブースで説明を聞く前に、まず、こういう質問を説明者に投げかけてみました。
「御社が提案しようとしているナレッジマネジメントとは、ソフトウエアやツールなんですか?それともサービスなんですか?概念や考え方なんですか?」
これに対して、ほとんどの説明者はちょっととまどった様子でしたが、ソフトウエアもしくはツールであると回答してくれました。もっとも、すんなりとそういってくれたわけではなく、例によってトータルソリューションとして云々、という説明からはじまったのですが、消去法的にサービスでも概念でもないという話になり、最終的にはソフトウエアというところに落ち着いたケースが多かったのです。
「では、どういう種類のソフトウエアなんですか?」という問いかけには、グループウエアのようでグループウエアでもなく、全文検索ツールとしての機能も内包している、インターネットの検索エンジンをイントラネット向けに特化したり、データマイニング的なオプションを持っていたり、と様々でしたが、どうやら多くの場合、検索機能が中核となっているように思えました。
どうもブース巡りでは全体像がつかめません。そこでいよいよセミナーに参加してみましたが、今回はあまりナレッジマネジメントツールを前面に押し出していない、ややマイナーなテーマを選んで話を聞いてみることにしました。というよりも、名の通ったツールを掲げたセミナーは早くに満席になってしまい、わたしが受けられたのが上記のようなセミナーだったというのが本当のところです。ただ、結果的にそれが非常によかったのですが。
■ ナレッジマネジメントをひもとく
少しメモランダムになりますが、キーになる発言を拾ってみました。
- ナレッジマネジメントは、現代ビジネス社会の中で、ごく当たり前のビジネス管理手法。だから、その目的はROIの最大化にある。ある研究機関の試算では、導入前後で8倍もの開きがあるということ。
- ナレッジマネジメントのビジョン(めざすところ)は、知的情報により業務改革を支援するということ。
- ITだけではナレッジマネジメントを組織に浸透することはできないけれど、ソフトウエアやツールなしでもできない。
- ナレッジマネジメントは企業情報を全方位にわたってカバーできるもの。企業ポータルもまたアプリケーションと企業コンテンツを全方位にわたって結びつける。
- ナレッジマネジメントの導入に当たっては、コントロールと実証性、アクセスの容易さや様々な利用方法、共有性や独創性、複合、組み合わせということを理解しておかなくてはならない。
- ナレッジマネジメントによってもたらされるものは、生産性の向上、ビジネス機能の一貫性の確保、トータルコスト削減などがある。また、階層化された組織体制をよりフラットなものに変革することを求められるようになる。
以上のように内容そのものは、ナレッジマネジメントについてというより、ナレッジマネジメントが業務改革のツールの一つであるという観点からその重要性や必要性について少し理解できたように思えます。
■ フロー型情報まで取り込むデータベース
たしかに、これまでも企業内の情報蓄積はあったはずです。しかしそれはベストプラクティス型といって成功事例や完成されたマニュアル、あるいはトラブル報告にみられるような最終結果情報の蓄積であって、そこから新たな知的創造をもたらす協創型ではなかったわけです。本来、企業内で流通している情報には、DB化された情報、文書情報やマニュアルなどのストック情報、メールや社内掲示板などのフロー情報があるわけです。いわゆるストック情報は、これまでもナレッジマネジメントの対象領域とされてきたわけですが、本当の協創型ナレッジマネジメントをめざすのであれば、後者のフロー情報に着目すべきであることはいうまでもありません。
フロー情報の最たるものがメールやメーリングリストですが、これらは非定形情報であり、こういったものを活用しようとすると、現時点では、まだまだメール内情報の体系的整理の手段がないことや、添付ファイルをどのように取り扱うかといった技術的検討が不可欠となってくるわけです。
本来的にはメールではなくテーマ別に区分された掲示板などコミュニティでの情報共有や協創をはかるべきなのかもしれませんが、掲示板が受動的情報発信(見に来てくれないと情報を提供できない)であるのに対し、メールやMメーリングリストはプッシュ型の情報発信ですから、否応なく情報が送りつけられるメリットはあります。従って、このふたつをうまく融合化させることで、より効果的なフロー情報の収集と整理分析そして活用が可能になってくるのはあきらかです。
■ ブログもナレッジマネジメントツールになる
ひとつのキーワードとして、最近、パーソナルユースとして人気を博しているMovable TypeやXoopsなどのいわゆるBlogツールをビジネス用途に導入して、イントラネット上でのコミュニケーションツール兼ナレッジ集積用ツールとして活用し始めている企業が増えているといいます。
しかし、そういったナレッジマネジメント導入のためには、大規模なシステムは必ずしも必要ではないことは事実のようです。まずは企業内におけるストック情報、フロー情報を、いずれにしても電子化していくことは最低限度必要な取り組みです。そのためにはメールシステムや掲示板システム、それらを統合したグループウエア、そしてBlogシステムなどの導入と活用をはかっていく必要があります。
その上で、蓄積された情報の分類や整理を行うわけですが、最初は手間暇をかけずに全文検索のソフトなどを使うのも方法でしょう。あとは使っていきながらより便利なツールなりサポートシステム、それこそがナレッジマネジメントシステムですが、そういったものを導入していけばいいのではないでしょうか。
以上のように、ナレッジマネジメントというのは、企業や組織における情報蓄積と分類活用を網羅的かつ効率的に行うためのサポートシステムであり、企業内の知恵やノウハウといったものがようやく電子情報として蓄積され始めた現在において、これまで人間とともに、あるいは時間とともに失われていった数多くの英知を蓄積し再利用し、新たなる知恵の創造をはかることで、企業活動をきわめて効果的に向上させうる手段であり、これからの企業における大きな知的財産となりうるものだといえるようです。
(株)コープKサットWeb、BusinessNow!に掲載されたものに加筆
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