2018年12月1日土曜日

製造業から学ぶ手作りIoTとは[連載第39回]


 生協のインターネット事業-新たな挑戦の時 
コープソリューション2018年11月1日号掲載

 トレンドワードから、やや遠ざかりつつある感があるIoTですが、製造業を中心に本格実用段階に入りつつあることがその理由のようです。
 もはや流行ではなく、IoTが当たり前になりつつあるというのが、製造業のトップの共通認識です。そこからは、やや取り残されている物流や流通業界においても、もはや避けては通れない道筋になりつつあります。
 では、どういったところから取り組んでいけばいいのでしょうか。その手がかりを探してみましょう。



■ もの作り大国ニッポンへの脈動
 今、国内では製造業を中心にIoTの活用が進んできています。「もの作り大国ニッポン」への動きが加速しています。
 最近、製造業を中心とした中堅企業数社のトップに連続してインタビューする機会を得ました。キーワードはIoTです。各社ともIT活用はもとより、IoTの先進的導入、活用企業として、その業界では有名どころばかりです。
 インタビューで垣間見えたのは、IoTというものは、どこかから買ってきて据え付ければ、業務の可視化や効率化ができるものではないということでした。
 どの会社においても、トップが率先して現場に立ち、問題点を洗い出しながら、その一方で、多くはエンジニア出身という得意分野を生かし、簡単なセンサーを取り付けたり、Webカメラを設置したりというところからスタートして、製造現場の業務改善を行ってきたということでした。
 例えば、高価な完全自動工作機を諦める代わりに、半自動機を導入し、異常検知センサーだけを手づくりして、夜間に粗加工を無人で行って、昼間に技術者が仕上げ工程を行うことで、少ない投資で24時間のフル稼働を実現した事例などもありました。

■ 物流・流通業のIoTは
 IoTは、製造業だけにとどまらない勢いを見せています。
 特に物流と流通業界でも新たな動きが始まっています。
 物流分野では、製造工場のIoT化に伴い、工場からの出荷予測の精度が大幅に高まり、納品先の貨物ヤードのスケジュールコントロールなども含めた高効率のロジスティックコントロールをサプライチェーン全体で実現できるようになってきています。
 二〇一九年には、東名阪での長距離トラックの隊列走行実験が開始されるなど、ロジスティクスのメインストリームは、この数年で劇的に変化していきます。一方で、物流のラストワンマイル、実際に消費者顧客へと届けるソリューションについても、これまで未来予測として紹介してきたものが実用実験段階に入りつつあります。

■ 店内を徘徊するロボット
 流通業界では、いよいよロボット技術の登場でしょうか。ロサンゼルスに本社を置くボサノバロボティクス社が開発したロボットは、小型のキャリーバッグほどの面積で、縦に2メートルほど。ゆっくりと店内を巡回しながら搭載されたカメラで商品棚を撮影していきます。
 そして、商品の欠品を発見すると担当者やバックヤードにアラームを発します。また、棚札とPOSのマスターの価格違いを検出し、これもアラームを発します。最近では電子棚札が多くはなっていますが、訴求性から紙のPOPは重要なツールです。しかし、枚数も多くなると、付け間違い、取り外し忘れは常態化しがちです。こうした、欠品や価格違いによる販売ロス、クレームの発生による損失などを、このロボットが防いでくれるのです。

■ 手作りIoTへの挑戦を
 ただ、こうしたソリューションも、導入となるとそれなりの投資も必要です。そこで、考えていただきたいのは、トップみずからが取り組んだ製造業のIoTの事例です。
 先ほどのロボットについていえば、Webカメラで店内の状況をくまなく撮影できれば、あとはソフトウエアでどのように処理をするかの問題です。
 画像処理で陳列している商品の数を数えるのはやや難しいまでも、商品の有無は意外と簡単に認識できます。最近のPOPにはたいていバーコードも印字されていますので、価格文字を画像処理で認識し、POSマスターとの価格比較や、棚割情報との比較で価格間違いや付ける場所の間違いなどは検知可能でしょう。
 あとは、例えば、何台かの買物カートにWebカメラを取り付けて、買い回るお客さんをロボットの代わりに活用するといったアイデアも出てくるかもしれません。
 製造現場で見いだされ、その後、本格的なシステムが開発されるきっかけとなった、いわゆる「手作りIoT」。
 流通業の世界では、まずはここからチャレンジしていく段階なのではないかと思います。