コンピュータの活用を学ぶために適切な資格試験 |
[抄録]
従業員にITに関する資格を取得させることは、企業にとっても、ITを武器に業務改善のリーダー的な役割を果たす人材を確保できるという意味で、大きなメリットをもたらすものになる。また、そのための組織風土や環境作りと継続学習させる仕組みが重要となる。
■ 資格取得の奨励は社員教育の点からも重要
コンピュータの活用というテーマは、企業規模の大小を問わず、経営者のみなさんの大きな悩みのひとつだと思います。パソコンであれ、オフコンであれ、導入するには相当の投資が必要であり、もし活用できなければ会社にとっても大変な損失となります。
そのため、ITの専任部署をお持ちであればともかく、一般社員の方にコンピュータの活用を任せなければならないとなると、どういった勉強をさせればビジネスに役立つコンピュータの活用ができるか、ということが人材育成という点を含めて経営者の判断が問われる場面だと思います。そして、そのひとつとして勉強の成果が形となって現れる資格試験へのチャレンジという方法も、社員の勉強への意欲を維持向上させる目標として適切な方法ではないでしょうか。
■ 試験合格が最終ゴールではない
ただ、ご存じのとおりIT関連の資格は、弁護士や会計士のように、その資格がなければ業務ができないわけではありません。自分自身のその分野での知識レベルや習熟度合いを客観的に評価したり確認したりするためのものが大半です。したがって、資格が最終ゴールではなく資格に向かって勉強を続ける過程で学んだコンピュータやIT技術についての知識や技能を実際のビジネスや日常の業務改善に応用して成果を上げることが目標だということを指導していくことも大切です。
また、資格取得への勉強は机上のものが中心になりますので、資格取得をしてからではなく、早い時期からコンピュータに触れる機会を多くするような配置転換など仕事上の環境にも配慮してあげる必要があります。さらに、資格取得者に報償を与える社内制度を整備するなど処遇面での支援も資格取得への意欲を高める手段としては効果が大きいものです。
■ 「初級シスアド」は業務改革の推進役に
では、具体的にどういった資格が有効かといいますと、パソコンの技能資格としては、マイクロソフト社のオフィスソフトの技能試験であるオフィススペシャリストやP検と呼ばれるパソコン検定試験があります。また、NTTコミュニケーションズ社が実施しているドットコムマスター(インターネット検定)は、パソコンだけでなくインターネットに関する知識なども含めた試験となっています。
今回の資格取得をすすめる目的としては、あまり専門的な知識や技能を要求する資格ではなく、社内においてIT技術を活用し、また、他の社員へのIT教育や啓蒙をおこなって、業務改革をすすめていくという総合的な企業内IT推進者の育成であると思います。そうした役割を果たす知識や考え方を習得できるという点で、情報処理技術者の「システムアドミニストレータ(シスアド)」資格が国家資格でもあり、もっとも適切な資格ではないかと思います。「上級」と「初級」があり、後者であればコンピュータについての基礎知識と業務改善への適用方法を中心に雑誌や参考図書を中心に半年程度の勉強で充分取得できる資格です。企業にとっても、ITを武器に業務改善のリーダー的な役割を果たす人材を確保できるという意味で、「初級シスアド」資格を取得させることは大きなメリットをもたらすものになるでしょう。
(株)リックテレコム社刊「COMPASS(コンパス)2005年秋号」掲載