2005年11月6日日曜日

コンピュータの活用を学ぶために適切な資格試験

コンピュータの活用を学ぶために適切な資格試験


[抄録]
 従業員にITに関する資格を取得させることは、企業にとっても、ITを武器に業務改善のリーダー的な役割を果たす人材を確保できるという意味で、大きなメリットをもたらすものになる。また、そのための組織風土や環境作りと継続学習させる仕組みが重要となる。



■ 資格取得の奨励は社員教育の点からも重要


 コンピュータの活用というテーマは、企業規模の大小を問わず、経営者のみなさんの大きな悩みのひとつだと思います。パソコンであれ、オフコンであれ、導入するには相当の投資が必要であり、もし活用できなければ会社にとっても大変な損失となります。


 そのため、ITの専任部署をお持ちであればともかく、一般社員の方にコンピュータの活用を任せなければならないとなると、どういった勉強をさせればビジネスに役立つコンピュータの活用ができるか、ということが人材育成という点を含めて経営者の判断が問われる場面だと思います。そして、そのひとつとして勉強の成果が形となって現れる資格試験へのチャレンジという方法も、社員の勉強への意欲を維持向上させる目標として適切な方法ではないでしょうか。


■ 試験合格が最終ゴールではない


  ただ、ご存じのとおりIT関連の資格は、弁護士や会計士のように、その資格がなければ業務ができないわけではありません。自分自身のその分野での知識レベルや習熟度合いを客観的に評価したり確認したりするためのものが大半です。したがって、資格が最終ゴールではなく資格に向かって勉強を続ける過程で学んだコンピュータやIT技術についての知識や技能を実際のビジネスや日常の業務改善に応用して成果を上げることが目標だということを指導していくことも大切です。


 また、資格取得への勉強は机上のものが中心になりますので、資格取得をしてからではなく、早い時期からコンピュータに触れる機会を多くするような配置転換など仕事上の環境にも配慮してあげる必要があります。さらに、資格取得者に報償を与える社内制度を整備するなど処遇面での支援も資格取得への意欲を高める手段としては効果が大きいものです。


■ 「初級シスアド」は業務改革の推進役に


 では、具体的にどういった資格が有効かといいますと、パソコンの技能資格としては、マイクロソフト社のオフィスソフトの技能試験であるオフィススペシャリストやP検と呼ばれるパソコン検定試験があります。また、NTTコミュニケーションズ社が実施しているドットコムマスター(インターネット検定)は、パソコンだけでなくインターネットに関する知識なども含めた試験となっています。


 今回の資格取得をすすめる目的としては、あまり専門的な知識や技能を要求する資格ではなく、社内においてIT技術を活用し、また、他の社員へのIT教育や啓蒙をおこなって、業務改革をすすめていくという総合的な企業内IT推進者の育成であると思います。そうした役割を果たす知識や考え方を習得できるという点で、情報処理技術者の「システムアドミニストレータ(シスアド)」資格が国家資格でもあり、もっとも適切な資格ではないかと思います。「上級」と「初級」があり、後者であればコンピュータについての基礎知識と業務改善への適用方法を中心に雑誌や参考図書を中心に半年程度の勉強で充分取得できる資格です。企業にとっても、ITを武器に業務改善のリーダー的な役割を果たす人材を確保できるという意味で、「初級シスアド」資格を取得させることは大きなメリットをもたらすものになるでしょう。


(株)リックテレコム社刊「COMPASS(コンパス)2005年秋号」掲載


2005年8月25日木曜日

インプットとアウトプット

インプットとアウトプット


[抄録]
 インプットとアウトプットは必ず等価であること、このことはコンピュータシステムに限らず、社会システム全般にいえること。あらゆる社会システムは、コンピュータシステム同様、[インプット]→[処理]→[アウトプット]という処理フローの集合体でありそれを複雑化したものであることを理解しておくべきだ。



■ 処理の原点は[インプット]→[処理]→[アウトプット]


 コンピュータの教科書をひもとくと、その最初に必ずといっていいほど、[インプット]→[処理]→[アウトプット]という図が出てきます。コンピュータというものは、インプットを受けて処理をし、アウトプットをするものだという概念をもっとも単純化したフロー図なのです。この[処理]の部分がコンピュータの役割なのですが、ここが次第に複雑化し、それとともにブラックボックス化しているのがコンピュータシステムの現状というわけです。


 ただ、どれほど複雑化し、ブラックボックス化したとしても、処理の前後においてインプットとアウトプットは必ず等価でなくてはならないという絶対的な原則があります。自動販売機を例にとってみましょう。内部がどういう構造になっているかは利用者にはブラックボックスですが、200円を入れて好みのボタンを押すと、120円の缶ジュースと80円が返ってきます。これが違うジュースだったり、おつりが足りなかったりすると、たちまちクレームになってしまうわけです。


■ 行方不明になるインプットデータ


 こんなことは当たり前、といいたいところなんですが、コンピュータシステムの世界では、最近、これが当たり前でないことが往々にしてあるということに気づきました。わたしの場合、一般企業のシステム部門に勤務していますので、日常的に業務システムの運用上のさまざまな報告を受ける立場にあります。一番多い報告が、システム上のトラブルや人為的ミスにより業務面へ影響を与えた場合に報告される、いわゆる障害報告といわれるものです。


 今日も担当者がやってきました。「で、双方のサーバのマスタに非同期がありまして、受け取ったトランザクションをオミットして・・・」「以前からこのコードのデータはオミットする仕様になっていまして・・・」などとなにやら難しそうな説明を繰り返してくれるので、「それは簡単に言えば条件に合わないデータを削除したということなんだね。それなら当然、エラーリストなりログなりに出して利用部門にもわかるようになっているよね?」と問いかけると、担当者いわく「いえ、オミットしているだけです・・・」。


■ インプットとアウトプットは必ず等価であること


 ホストコンピュータと云われた大型汎用機の世界では、処理実行時に実行レポートなどを出力していて、オペレータという専属の人間がインプット件数とアウトプット件数をチェックするという時代もありましたが、サーバやパソコンといったオープンシステムの時代にはいると、次第にそういったチェックへの意識は薄れて来ているようです。もちろん、その背景には高度なサーバ管理システムなどもあって専任のオペレータがいなくても、以上があれば携帯電話にメールを送信して知らせてくれるなどより高度な対応を実現してくれていることもあります。インプットとアウトプットのチェックなどもそういうチェックポイントを組み込んでおいて、異常があれば通知することなどきわめて簡単なことです。しかし、それをシステムに組み込む人間に意識がなければ、彼らの言葉を借りれば、簡単にオミットされて、コンピュータの中で迷子になってしまうデータが誕生するわけです。


 インプットとアウトプットは必ず等価であること、このことはコンピュータシステムに限らず、社会システム全般にいえることだと思います。あらゆる社会システムは、コンピュータシステム同様、[インプット]→[処理]→[アウトプット]という処理フローの集合体でありそれを複雑化したものです。ビジネスモデルにせよ経営改革にせよ、常に考えておかなくてはならないのが、どういうインプットからどういうアウトプットを生み出すか、ということなのです。もちろん、インプットとアウトプットが必ず等価になるというのは、ひとつの価値基準においてであり、別の価値基準からすれば、まったく新しい価値を創造したり、従来の価値を増幅したりするものであることは云うまでもありません。


2005年8月11日木曜日

改革には「後退」も「停滞」も許されない

改革には「後退」も「停滞」も許されない


■ 時代を見失った政・官・報


 いずれの会社や企業においても置かれている状況がわからないままに、狭い社内での抗争や自己保身に走る輩は多いものです。しかし、それであっても、バブル期以降の空白の10年といわれる経済の停滞期とそれに続く長い不況の時代を生き抜いてきた企業においては、常に自分の周囲にある状況を理解し、絶えず挑戦と改革を繰り返しながら、自らにこそ厳しく律していくという企業風土がめばえてきているわけです。


 しかしながら、情勢への理解なく、日夜不毛な抗争と保身に明け暮れている集団が日本にも、それも国家の中枢にしぶとく生き残っていました。


 経済は回復基調にあるとはいえ、日本という国家全体を考えるときに、その財務状態がいかに危機的な状況にあるかは多くの識者からも指摘されているとおりです。しかしながら、高度経済成長期以来、政治家も官僚たちも誰ひとりとして有効な方策を打たずに今日を迎えています。あえて、この間に成果を上げた対策のひとつ、いわゆる土光臨調(1981年3月、当時の財政危機を背景に、土光元経団連会長を会長とする第二次臨時行政調査会が設けられ、我が国の行財政改革と取り組んだ)にしても、政や官ではない民間のカリスマ的な指導者の力を借りたものであったわけです。


■ 構造改革は最終局面にさしかかっている


 以来20年の時を経て、ようやく改革を柱に据えた内閣が誕生し、経済財政構造の改革をテーマに、その具体的な改革ターゲットとして官僚や公務員の依存的な体質を変革するとともに、民間で云うところのリストラ、不要な人的資源を適切に再配置できる体制作りを進めようとして、「民間でできることは民間に任せる」を合い言葉に、肥大化した官僚機構と公務員組織という聖域へメスを入れ始めたわけです。


 一般企業であれば当たり前のことが、明治以来120年間に渡って築きあげられてきた官僚社会、公務員の親方日の丸気質の中では、なかなか実現できてこなかったわけです。しかし、今ようやくその聖域にメスが入り始めた。その最大といってもいい牙城、300兆円もの国民の資産をほとんど活用しないままに死蔵し、世襲制の特定郵便局長や最大の公務員労組である全逓、与野党両面に渡って強力な政治的圧力を有した組織が手を握り、巨大な官僚と公務員の既得権益を維持しようとしている郵政事業に、民営化の流れが起ころうとしています。


 残念ながら、あと一歩のところで、今国会における郵政民営化関連法案の成立はできませんでしたが、改革には抵抗がつきものです。理がかなわないとなると「情に棹さす」発言が多くなって来ていますが、決してあきらめてはいけません。むしろ、いよいよ抵抗勢力が最後の力を振り絞っている、ゲームでいえばラスボス登場の場面かもしれません。


■ 報道だけを信じず自分で判断することが重要


 特に注意が必要なのは、我が国においては報道が極めて恣意的な動き方をするということです。メディアは公平なものという概念は欧米ではすでに過去のものとなりつつあるようですが、日本においてもその傾向は顕著です。全体観をとらえずに対立軸ばかりを強調する傾向は混乱や事件や事故を、むしろ歓迎している営業主義的な体質が見え隠れしています。そして、重大な局面になると、「わからない」「説明不足」というコメントを多用しますが、これは、極めて重大な責任逃れに過ぎません。国民に対して説明責任のある立場の人々の話を正しく、なおかつわかりやすく伝える責任はメディアにあるのです。そのことを忘れて他人にばかり責任転嫁するメディアに正論を語る力量はもはや残っていません。したがって、もはやメディアに期待するのではなく、国民は、与えられるのを待つのではなく、みずから努力して情報を集め、自分の見識と良識にしたがって、正しい判断をする義務があるのです。


■ あなたの会社の構造改革は


 なんだ政治の話か、と思われるかもしれません。しかし、政治もひとつの企業内の出来事も同じ社会活動なのです。もしあなたが、企業の中で、またはあなた自身の会社で改革を進めようとされているのであれば、おそらく同じような抵抗にあったり、批判にさらされたりしているはずです。そうでなければ、あなたは改革を進めていないことになります。そのときに、忘れてはならないことは、改革には抵抗や痛みはつきものだということです。そして、それであっても、改革は停滞させたり、ましてや後退させるということなど、決してあってはならないことだということを銘記していただきたいのです。


2005年8月4日木曜日

プリンタショックの背後にあるもの

プリンタショックの背後にあるもの


■ プリンタ市場を取り巻く情勢


 好調な業績を誇っていたキャノンが営業利益の下方修正を発表し、株価が一気に下落した翌日、プリンタ関連でキャノンとシェアを二分するセイコーエプソンもプリンタ販売の業績悪化と収益の悪化で業績の下方修正を発表しました。これに連動するように、リコーなどのプリンタ関連企業へも株式の連想売りが発生して、市場は今や「プリンタショック」と呼ばれる状態に陥っています。


 プリンタ市場の現状としては、国内市場はある程度飽和状態が続いているわけですが、おもに欧州向けの輸出市場でキャノンやエプソンの製品が高い人気の元で大きなシェアを獲得してきました。しかし、ここに来て、HPなどの海外ブランドの台頭による価格競争によって収益性が悪化してきたことが今回のプリンタショックを招いたといわれています。


■ プリンタショックの背景


 さて、ここで経済情勢を論ずるつもりは毛頭ありませんが、かといえ、経済の動向と不可分のビジネスの世界に身を置いているわけですから、まったく無視するわけにはいきません。そこで、いわゆる市場の動向とは違った観点で今回の出来事を分析してみることにしましょう。


 まず、パーソナルユースを考えていましょう。最大の利用目的はなんでしょうか。ホームパーティの案内状や住所録程度であれば、枚数は知れています。パーソナルで写真画質のインクジェットプリンターを購入する層の目的の最たるものは年賀状印刷ではないでしょうか。一方で、キャノンとエプソンというシェアを二分するメーカーのパーソナル機の中で上位機は実勢4万円台、普及機で2万円程度です。これを4年使うとして、年賀状を毎年100枚出す人であれば1枚あたりのプリンタコストは上位機で100円、普及機でも50円になります。さらにインク代も結構大きなコストです。写真画質を求めるとなるとフォト光沢紙も必要になります。どうせパソコンで文字も含めてレイアウトしてしまうのであれば、そのまま写真プリントにしてしまうほうがコスト的には安くて済みます。インク代もばかになりません。4色が6色に、ついには8色のカートリッジを必要とする機種まで登場し、インターネット直販でも8色で1万円を超えてしまうというもはや消耗品といえないコストになっています。


 こうして年末ごとに新機種が発売されるプリンタ業界の流れは、すでに消費者からは敬遠されはじめていて、プリンタの市場は国内から未開拓の欧州市場へと向かいはじめたところへ、海外ブランドの競合製品の登場、特にHPやDELLといった直販系の大手メーカーがプリンタとのセット販売を強化してきたために単体販売の両社が低価格競争に巻き込まれたという状況のようです。


 しかしながら、表面的には国際的な価格競争という様相を呈しながら、実際のところ、プリンタメーカーにとって最大の危機が迫ってきているのは意外に別方向からではないかと考えます。


■ ペーパー媒体の変化


 それは、情報の交換や情報発信そして記録の中心的媒体であった紙、あるいは印刷物というものが、やはりそれでも中心であり続けることはここ何十年かにわたって間違いないにせよ、その地位を次第に浸食されつつあるということなのです。おそらく、インターネットが普及したとはいいながら、新聞や雑誌は現在の姿形を変えずにこれからも残り続けるでしょう。それは、ラジオやテレビが登場したときでさえ、新聞や雑誌などのペーパーメディアは生き残ったばかりでなく、独自性を発揮してさらに発展を遂げたことからもいえると思います。


 ただそれは、大規模な出版業や印刷業の場合であって、わたしたちの身近にあるペーパーメディアは大きく変わりつつあるのです。考えてみれば、わたしも義務教育の終わり頃に謄写版印刷というものに出会って、学級新聞というメディアを初めて作ってから、学生時代の手書き原稿とコピー機の登場で簡単に作れるようになった同人誌、ワープロソフトとプリンターの登場で、かつてなら専門業者に頼まなければならなかったようなペーパーメディアがいとも簡単に作り出せるようになって、ついにはフルカラーで写真画質のものでも作り出せるところまで到達したわけです。まさに頂点を極めたといっても過言ではないかも知れません。


■ インターネットによるペーパーレスの進展


 そういった中で、実はプリンタメーカーを震撼させるような流れが起こっていたのです。それはメールやインターネット上のサイトの伸張が、これまで主流であったインクジェットプリンタの市場を周囲から取り崩し始めていたのです。もはや、写真をプリントして配るという習慣は、特に若年層を中心として大きく減りつつあります。企業でそうであるように、印刷物の抑制は、単に環境への影響を理由として削減を迫られているだけでなく、企業内のワークフローの中で、紙による情報公開や情報共有が不可能になる一方で、データによる配布や情報の流通、最後まで問題であった外部から到来する紙情報についてもイメージ処理が簡単かつ効率的に行われるようになったことで、一気に紙からの脱却が進み始めています。


 こうしたことは、大企業や先進的な組織から始まったことですが、IT化の進展や中堅以下の企業やパーソナルユースにおいても活用可能な低価格のイメージスキャナやかつてはアドビー社のアクロバットというソフトでしか作成できなかった文書イメージ処理のデファクトスタンダードであるPDFという形式のイメージデータを作成するソフトが低価格化し、ついにはフリーウエアでまで登場するに至って、一気に活用度が高まってきたのです。


■ OA化の時代は、むしろ紙の増産


 かつてOA化というキーワードがあり、そのめざすところがペーパーレスオフィスであるとうたわれた時代がありました。しかし、OA化の進展は、ワープロや表計算ソフトの活用で、むしろ紙資料が増大して、ペーパーレスには大きく逆行していたのです。もちろん、紙をハンドリングすることについての手間やコストの問題はOA全盛当時からすでに指摘されていたとおりですが、それを解消するだけのITインフラが整備されていなかったわけです。ようやく当時の理想であったペーパーレスオフィスやそれに伴う業務の効率化、環境への負荷軽減といった命題に解決の糸口が出てきたわけですから、これを充分に意識した企業内の業務フローの効率化や改革をすすめて行かなくてはならないでしょう。


 そして、最後のハードルといわれていた許認可申請や法的文書保管についても、e文書法や公的文書の電磁的記録による保管の促進といった施策で行政関係が一気に歩調を合わせてすすめようとしている現在、もはや障害となるのは既存の業務携帯や業務形式に拘泥する一部の経営者層や管理者層、経験者層、および改革抵抗勢力だけになってきているのです。


■ 時代を見極めたソリューション提案を


 時代の流れとしてのプリンタショックは、まだまだ続いていくと思われますし、プリンタ業界にとってはさらにきびしくなる可能性は高いといえます。しかし、コピー機大手の富士XEROX社のように、早くからPDFに対抗するDocuWorks(ドキュワークス)といったイメージ形式および管理のソフトをトータルソリューションとして提供しているメーカーもあります。時代の流れと方向性を見極めることも経営の力だということを認識していただく一方で、ソリューションを提案する側にとっては、プリンタショックの背後にあるものをいかに理解し、大きな時流に即した形での業務改善や経営改革を提案できるかが問われているものと思われます。


2005年7月27日水曜日

ビジネスでメールを利用する際のマナー

ビジネスでメールを利用する際のマナー


[抄録]
 メールは素早く確実に相手に要件を伝えることができる一方で、相手の顔が見えないというデメリットをカバーするために状況を考えながら使い分けることが必要となる。また、同じ内容を相手だけでなく複数人の関係者に一斉送信できるCC機能は、ビジネスのスピードをあげる上で大変役に立つだろう。



 メールは忙しいビジネス社会において相手の仕事の手を止めずに連絡をすることができ、相手の状況に配慮した通信手段です。耳で聞く電話と違って用件が確実に伝わりますし、何度でも読み返すことも可能です。
 こうした点で便利なメールですが、一方では直接会って反応を見ながらの会話や質問に即答できないといったデメリットもあります。また、商談を左右するような局面やミスをしたお詫びなどについては、一般的には直接足を運ぶほうが好印象を与え評価も高くなると言われますので、何でもメールで片づけてしまうという姿勢は避けた方がいいでしょう。


■ ビジネスメールの独自マナー


 ビジネスメールといっても特別なものではありませんが、仲の良い友人との気軽なメールとは違い、独自のルールやマナーがあります。
 まず、ビジネスメールの場合、タイトルは内容を要領よく表現したものである必要があります。「ご連絡」とか「ご訪問の件」などのように抽象的では数多く届くメールの中で埋もれてしまいますし、中身を見るまで内容が想像できないなど、忙しい相手には敬遠されてしまう場合もあります。「明日の面談30分繰り下げのお願い」「昨日のセミナー資料添付します」といった具体的で端的な書き方をマスターしましょう。
 もちろん、「(^^;) 」といった顔文字や「(汗)」などのムード表現は厳禁ですし、文章は敬語、謙譲語を使い分けてあいまいな表現や言葉使いは避けましょう。語尾も「です。」「ます。」に統一するといいでしょう。
 添付ファイルも要注意です。ブロードバンド時代ですから多少大きな容量のファイルもそれほど時間がかからず届けることはできますが、それでもネットワークに負担がかかりますので圧縮ツールで容量を減らして添付するなどの配慮が必要です。もちろん添付する前にウイルスチェックを行うことは最低限のルールです。ウイルス感染したファイルを送付することは、社会的な制裁すら覚悟しなくてはならないほど重大なミスなのです。


■ CCの便利な活用法


 メール独特の機能を上手に活用する例としてCC(カーボンコピー)の活用があります。メールの宛先の次にはCCという別の宛先欄が表示されているはずです。これは同じメールをこの宛先にも送るという機能です。同報するだけなら宛先欄に並べて書けばいいのですが、あえてコピーとして送るのは、宛先はメールを送る目的の相手、CCには社内の関係者や自分の上司を入れて、客先とこういう商談をしていますよという報告やアピールを兼ねるとともに、客先に対しては、「このメールは私だけでなく、上司も了解している内容なのですよ」という安心感を与える役目も果たしてくれます。
 このように、ルールとマナーを理解してメールを活用していけば、低コストでスピーディな通信・広報手段として皆さんのビジネスをプラス方向に導いてくれることでしょう。


(株)リックテレコム社刊「COMPASS(コンパス)2005年夏号」掲載


2005年7月24日日曜日

第1回 1台の電話機からCTIは始まる

第1回 1台の電話機からCTIは始まる


[抄録]
インターネットショップが花盛りだが通販・カタログショッピングの受注媒体としては電話が主流。単に受注手段としてだけではなく、セールスとしても強力な武器になる。大がかりなコールセンターシステムがイメージされるが、スタート時点では数台の電話と手作りシステムでスモールスタートして、顧客とノウハウの獲得を始めることも一案。



■ 拡大するネットショッピングもシェア3%


 先頃、日本におけるインターネット広告の市場が、昨年ラジオ広告を抜き、2007年には雑誌広告を越え、2009年には現在の3倍にも拡大し、テレビ、新聞に次ぐ広告規模になるという予測が発表されました。もちろん、広告だけでなくショッピングサイトの売り上げも、2004年度で7兆円という規模に達し、さらに成長し続けています。
Ecmarket  しかし、消費者向け商業全体でのシェアでいうと3%程度で、まだまだすべてを席巻するまでには至っていません。マスメディアが喧伝することと実際との乖離があることの表れであり、あまり焦ったりあわてたりすることなく、それでいて今後の成長ぶりも注視しておくというのが正しい対応ではないかと思います。
 では、ネットショッピングが急成長する背景になにがあるのでしょうか。この点については、いろいろなところで論じられていますので詳論は、ここでは触れませんが、特徴的なものにだけ触れておきます。それは、いわゆる「非対面性」ではないかといわれているのです。「非対面性」とは、直接向き合って話し合うことなく、パソコンの画面に入力するだけで買い物ができる点を利点としてとらえた場合の表現なのです。


■ 非対面性を逆手にとるビジネスモデル


 ネットショッピングが「非対面性」を生かしたモデルだとすれば、それはネットショッピングの弱点でもあることになります。つまり、人間との対面性がない、言いかえれば、買い手側の希望や要望に応じたコンサルティングや商品選択をサポートしてくれるような買い方にはネットショッピングは対応できないというわけです。
 もっとも、ITの世界のことですから、すでにネット上でさまざまなコンサルティングや人間的な対話を実現するようなシステムも開発された途上であったりしますので、いずれは、そういったデメリットも払拭されるようにはなると思います。しかし、当面は対面型のショッピングシステム、いわゆる従来からのリアル販売のほうが、コンサルティング型の商品・サービス販売においては、一日の長があることになります。


■ ネットとリアルの間隙をぬって


 とはいいながらも、ネットショッピングの持つ特徴点は、これからの販売ビジネスにおいて無視できないメリットがあります。
 24時間いつでも受け付けてくれる。遠くまで出かけなくても注文できる。というネットならではの特徴点と、在庫や納期がすぐにわかる、といったリアル店舗の強みも持っているからです。
 では、こうした強みを生かしながら、残り97%のシェアのなかで成果を上げることができる販売方法としてどういったものがあるかというと、おそらくは多くのみなさんが、もはや当たり前と感じるであろう電話という手段なのです。当たり前のことではありますが、現時点においては電話こそがリアル店舗の特徴とネットショッピングの利便性をどちらも完全にとはいいませんが、その多くの部分を満足させ、なおかつ、多くの消費者にとってネットショッピングの経験者が1割程度しかいない現状の中で、ほとんどすべての消費者が電話による商品購入や注文を経験しているという事実は、これからも、しばらくの間は電話という通信手段が商品販売において強力な武器になることを意味しているといえるのではないでしょうか。


■ 電話受注からCTI、CRMへ


 電話で注文を受ける、というのは今に始まったことではなく、おそらく電話が登場して以来のビジネスモデルであり、いまさら云うことなどないのかもしれません。しかし、現在では来店して注文を受ける、ご用聞きに回って注文を集める、その代わりの電話、という存在ではなく、さまざまな顧客情報と連動させてビジネスチャンスを拡大するCTI(コンピュータ・テレフォニー・インテグレート:Computer telephony Intergrate)や顧客との長期的な関係性を維持するための取り組みCRM(カスタマー・リレーションシップ・マネジメント:Customer Relationship Management)などへと進化を遂げているのです。
 素晴らしい技術や製品を持ちながら、販売力を持たないために、事業の拡大が望めない、あるいは他社の下請けに甘んじるしかないという企業はかなりの数に上ると云われています。とは云いながら、新たな販売ルートの開拓や営業活動にさける人的パワーにも限界があります。より効率的な販売ルート確保のためにインターネットに乗り出すのも方法ですが、商品特性によっては、まだまだインターネットでの市場形成が難しいものもあります。
 ネットワークの部分を電話に置きかえて、コンピュータの力を活用した電話による販売網作りや営業活動をすすめていくことも、ここ当面の間の事業戦略としては有効ではないでしょうか。当然、そこで培われたノウハウや顧客は、次のステップでネットショッピングを展開する場合でも有効に引き継いでいくこともできるはずです。



■ どうすればCTIは導入できるのか


 それでは、つぎにどうすればCTIを営業活動に向けて導入できるのかということをお話ししましょう。
 CTIというと、どうしてもテレビなどで宣伝されているコールセンターのように、いくつものブースとたくさんの若い女性テレホンオペレータが座っている姿を想像されるかもしれません。しかも、各ブースには電話機ではなくヘッドセットとパソコンが並んでいて、オペレータたちは、次々とかかっている電話に対応しながら、パソコンの画面で情報を参照したり入力したりしている様子を思い浮かべるかもしれません。
 そういった大規模CTIシステムや大規模コールセンターももちろんありますし、こうしたコールセンターシステムはどうしても規模のメリットが出やすい仕組みでもあります。
 しかし、本来のCTIというのは、そういった大規模なものを意味するのではなく、それもひとつの発展形ですが、ひとりの顧客、1台のの電話機、ひとりのオペレータ、1台のパソコン、これらを有機的につなぎ合わせて、最大の顧客満足を得るための仕組みなのです。
(第2回に続く)


2005年7月21日木曜日

ナレッジマネジメントの世界

ナレッジマネジメントの世界


■ ナレッジマネジメントを探訪する


 最近話題のソリューションのひとつであるナレッジマネジメントとはどういうものなのかを理解したいと思い、いくつかのセミナーと展示会に参加してきました。
 セミナーに先立って展示会を見学しましたが、驚くほどの人が会場を埋めていまして関心の高さを示していました。
 それぞれのブースで説明を聞く前に、まず、こういう質問を説明者に投げかけてみました。
 「御社が提案しようとしているナレッジマネジメントとは、ソフトウエアやツールなんですか?それともサービスなんですか?概念や考え方なんですか?」
 これに対して、ほとんどの説明者はちょっととまどった様子でしたが、ソフトウエアもしくはツールであると回答してくれました。もっとも、すんなりとそういってくれたわけではなく、例によってトータルソリューションとして云々、という説明からはじまったのですが、消去法的にサービスでも概念でもないという話になり、最終的にはソフトウエアというところに落ち着いたケースが多かったのです。
 「では、どういう種類のソフトウエアなんですか?」という問いかけには、グループウエアのようでグループウエアでもなく、全文検索ツールとしての機能も内包している、インターネットの検索エンジンをイントラネット向けに特化したり、データマイニング的なオプションを持っていたり、と様々でしたが、どうやら多くの場合、検索機能が中核となっているように思えました。
 どうもブース巡りでは全体像がつかめません。そこでいよいよセミナーに参加してみましたが、今回はあまりナレッジマネジメントツールを前面に押し出していない、ややマイナーなテーマを選んで話を聞いてみることにしました。というよりも、名の通ったツールを掲げたセミナーは早くに満席になってしまい、わたしが受けられたのが上記のようなセミナーだったというのが本当のところです。ただ、結果的にそれが非常によかったのですが。


■ ナレッジマネジメントをひもとく


 少しメモランダムになりますが、キーになる発言を拾ってみました。


  • ナレッジマネジメントは、現代ビジネス社会の中で、ごく当たり前のビジネス管理手法。だから、その目的はROIの最大化にある。ある研究機関の試算では、導入前後で8倍もの開きがあるということ。


  • ナレッジマネジメントのビジョン(めざすところ)は、知的情報により業務改革を支援するということ。


  • ITだけではナレッジマネジメントを組織に浸透することはできないけれど、ソフトウエアやツールなしでもできない。


  • ナレッジマネジメントは企業情報を全方位にわたってカバーできるもの。企業ポータルもまたアプリケーションと企業コンテンツを全方位にわたって結びつける。


  • ナレッジマネジメントの導入に当たっては、コントロールと実証性、アクセスの容易さや様々な利用方法、共有性や独創性、複合、組み合わせということを理解しておかなくてはならない。


  • ナレッジマネジメントによってもたらされるものは、生産性の向上、ビジネス機能の一貫性の確保、トータルコスト削減などがある。また、階層化された組織体制をよりフラットなものに変革することを求められるようになる。 


 以上のように内容そのものは、ナレッジマネジメントについてというより、ナレッジマネジメントが業務改革のツールの一つであるという観点からその重要性や必要性について少し理解できたように思えます。


■ フロー型情報まで取り込むデータベース


 たしかに、これまでも企業内の情報蓄積はあったはずです。しかしそれはベストプラクティス型といって成功事例や完成されたマニュアル、あるいはトラブル報告にみられるような最終結果情報の蓄積であって、そこから新たな知的創造をもたらす協創型ではなかったわけです。本来、企業内で流通している情報には、DB化された情報、文書情報やマニュアルなどのストック情報、メールや社内掲示板などのフロー情報があるわけです。いわゆるストック情報は、これまでもナレッジマネジメントの対象領域とされてきたわけですが、本当の協創型ナレッジマネジメントをめざすのであれば、後者のフロー情報に着目すべきであることはいうまでもありません。


 フロー情報の最たるものがメールやメーリングリストですが、これらは非定形情報であり、こういったものを活用しようとすると、現時点では、まだまだメール内情報の体系的整理の手段がないことや、添付ファイルをどのように取り扱うかといった技術的検討が不可欠となってくるわけです。


 本来的にはメールではなくテーマ別に区分された掲示板などコミュニティでの情報共有や協創をはかるべきなのかもしれませんが、掲示板が受動的情報発信(見に来てくれないと情報を提供できない)であるのに対し、メールやMメーリングリストはプッシュ型の情報発信ですから、否応なく情報が送りつけられるメリットはあります。従って、このふたつをうまく融合化させることで、より効果的なフロー情報の収集と整理分析そして活用が可能になってくるのはあきらかです。


■ ブログもナレッジマネジメントツールになる


 ひとつのキーワードとして、最近、パーソナルユースとして人気を博しているMovable TypeやXoopsなどのいわゆるBlogツールをビジネス用途に導入して、イントラネット上でのコミュニケーションツール兼ナレッジ集積用ツールとして活用し始めている企業が増えているといいます。


 しかし、そういったナレッジマネジメント導入のためには、大規模なシステムは必ずしも必要ではないことは事実のようです。まずは企業内におけるストック情報、フロー情報を、いずれにしても電子化していくことは最低限度必要な取り組みです。そのためにはメールシステムや掲示板システム、それらを統合したグループウエア、そしてBlogシステムなどの導入と活用をはかっていく必要があります。


 その上で、蓄積された情報の分類や整理を行うわけですが、最初は手間暇をかけずに全文検索のソフトなどを使うのも方法でしょう。あとは使っていきながらより便利なツールなりサポートシステム、それこそがナレッジマネジメントシステムですが、そういったものを導入していけばいいのではないでしょうか。


 以上のように、ナレッジマネジメントというのは、企業や組織における情報蓄積と分類活用を網羅的かつ効率的に行うためのサポートシステムであり、企業内の知恵やノウハウといったものがようやく電子情報として蓄積され始めた現在において、これまで人間とともに、あるいは時間とともに失われていった数多くの英知を蓄積し再利用し、新たなる知恵の創造をはかることで、企業活動をきわめて効果的に向上させうる手段であり、これからの企業における大きな知的財産となりうるものだといえるようです。


(株)コープKサットWeb、BusinessNow!に掲載されたものに加筆